「公園でもゲーム機で遊ぶ子が増え、鬼ごっこや縄跳びなどをする子供は減る一方――。」
そんな記事の書き出しに、目が留まりました。玩具輸入販売ボーネルンドのインターネット調査によると、屋外での遊び方について最も多かった種類は「かけっこ、鬼ごっこ」の69%。「ゲーム機やスマートフォンのアプリ」が55%にも上り、「かごめかごめ」など昔から親しまれている伝承遊びはたったの14%という結果でした。同社は、遊び声に苦情が出たり、人気遊具が設置されなくなったりしたことが理由だと述べています。公園や空き地などが少なくなった、一緒に遊ぶ仲間が少ない、外で遊ぶことに不安がある、などといった母親の回答も見られました。
「今時の子供は外で遊ばない」
そんな非難めいた声に、「私だって外で思いっきり遊びたかった」と反論したくなる時があります。
私の家は住民が少ない地域にあり、小学校に在籍する子供の半数以上が区外から電車で通学していました。放課後に公園で遊ぼうとすると、寄り道をするほかありません。しかし、先生や見守りのボランティアが児童の通学路を把握しており、まっすぐ帰宅させられるのが常でした。高学年になると、クラスの大半が中学受験に向けて塾に通い始め、時間のある友達を見つけることすら難しくなりました。
もう一つ、公園で遊べなかった理由がありました。キャッチボールやバドミントンをしていると、年配の女性がやってきて「迷惑だからやめなさい」と言うのです。たしかに、場所や遊び方によっては他の利用者の邪魔にもなり得るし、危険な行為にも映ります。でも、高校生や大学生が同じことをしていても彼女は何も言いませんでした。小さな子供には叱責できても、大人の男性に抗議する勇気はなかったのでしょう。そんな理不尽な状況に憤りを感じ、外で遊ぶことが減っていきました。
遊具で遊べばいいのでは、という意見もあるかもしれません。ですが、もともと数が少ないうえ、年下の子供が使っていると遠慮せざるを得ません。そもそも鬼ごっこは人数が集まらないと盛り上がらないのです。
そんな経験を持つ立場からすると、屋外でもゲーム機で遊ぶ子供が増えている現状も頷けます。近年は、児童館や放課後の校庭開放が少しずつ整ってきているようですが、公園で遊んでいる子供はそれほど多くないように感じます。ゲーム機やスマートフォンが普及し、外遊びよりも簡単に楽しめる娯楽が増えたことも一因でしょう。でも、環境が整っていなければ体を動かす機会が減っていくのは当然で、遊び方すらわからないまま楽しさを知ることはできません。
大人たちは、ただ体を動かさない子供の姿を嘆くのではなく、屋外で遊びたい時に思う存分遊べる場づくりに努めるべきではありませんか。子供だって、本当はのびのびと体を動かして遊びたいんだから。
15日付 日本経済新聞朝刊(東京12版)30面(社会)「「屋外でもゲーム機」5割」