脱・東京目線のすゝめ

大学に入って間もない頃、筆者が故郷・宮城の話を大学の同期生にしていた時のことでした。方言や名産品の話題で盛り上がる中、何かの拍子で最低賃金の話になりました。
当時、宮城県の最低賃金は時給で700円台前半。それを知った東京在住の同期は目を見開いて言い放ちました。

「そんな時給で生活できるのか!?」

東京都の最低賃金は900円台。
宮城では時給が800円以上なら良い方です。一方で、都内の求人情報には時給4ケタの仕事もしばしば。悪気はないと分かりつつも、同期の言葉が引っかかります。地方では、都民の最低賃金以下で働く人が大勢いるのに。それ以来、最低賃金の格差を考えると悶々とするようになりました。

本日付の日本経済新聞朝刊によると、10月をメドに改定する全国の最低賃金が決まったそうです。47都道府県の引き上げ額は時給24~27円。うち23県で、厚生労働省の中央最低賃金審議会が示した引き上げの目安額「23~27円」を上回りました。
しかしながら、最下位の鹿児島県(761円)と東京都(985円)では200円以上の差があります。

都道府県ごとの経済状況によって最低賃金は異なります。過剰な引き上げは経営を圧迫することにもつながります。とはいえ、労働者側が賃金格差に納得がいかないのも正直なところ。

地方の声を聞くと、東京では耳にしないことがたくさんあります。筆者は昨年、最低賃金が全国で最も低かった沖縄県の労働局賃金室で話を聞く機会がありました。
「最低賃金を上げる方針はないのか」

と質問すると、担当者は
「沖縄県の経済状況は安定しているが、審議会で決めるので今すぐ上昇するかは分からない。現在の最低賃金が欠陥というわけではない」。
具体的な話は差し控えていました。

また、筆者の故郷・宮城の友人に最低賃金について訊くと、

「東京より低いのは仕方がないが、やはり上がってほしいのが本音。私は実家暮らしだから良いが、一人暮らしの人はもっと切実に考えていると思う」
と本音を聞かせてくれました。

地方の人間にとって東京の賃金は破格です。
「生活できるのか?」などと言われた日には悔しさがにじみ出てきます。
経済状況の違いや人口規模が前提にあるので、賃金格差はある程度「仕方がない」「どうしようもない」ことと言えるのかもしれません。

ただ、最低賃金をはじめ、東京目線では見えない問題が地方にはあると思います。

都会住まいの皆さん、たまには地方の目線で問題を考えてくれませんか。

参考記事:
14日付日本経済新聞朝刊(13版)5面「若者引き留め 地方間競争」

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