「若者」「都市型」「女性」
国際オリンピック委員会が東京五輪の種目を決める際に掲げた三つのキーワードです。今日は、スポーツ界に新しい風を吹きこむ「都市型スポーツ」について考えます。
4月に広島市で、アーバンスポーツの世界大会「エクストリーム・スポーツ国際フェスティバル」(FISE)が開催されました。実施されたのは、東京五輪で新たに採用された自転車のBMXやスケートボード、スポーツクライミングなどです。国内ではまだなじみの薄い種目が多く、挑戦的な催しでしたが、2日間で7万人超もの観客を集めました。
FISEは1997年にフランスで始まった世界を転戦する大会で、欧州では人気を博しているイベントです。自由で雑多な雰囲気が特徴で、野外フェスのような空間が広がります。
記事によると、会場ではヒップホップが響き、イケイケなDJたちが競技や技のミニ解説をさりげなく交ぜてくれるといった工夫があるそうです。観戦スタイルは、「基本的に立ち見で無料」。いくつものステージで同時進行する競技を、自由に動き回って見ることができます。会場内の屋台で買ってきたお酒や肉料理を楽しむことも可能です。子どもが遊べる体験コーナー、アーティストのライブもあるというから驚きです。
「日本のスポーツは江戸時代。このままでは生き残れない。FISEは黒船として『ドアを開けろ』と言っている」。
イベントの仕掛け人で、国際体操連盟会長も務める渡辺守成氏は話します。
マイナー競技を「アーバンスポーツ」に変身させる挑戦も始まっています。31歳の若さで日本フェンシング協会の会長を務める太田雄貴さんは、「エンタメ化」することの大切さを主張していました。「アスリートファーストって何だ? と考えた時に、僕はお金だと思ったんですね。稼げる競技で勝てるような舞台をつくってあげることがアスリートファーストだ」と腑に落ちたそうです。勝ち負けだけにこだわるのではなく、フェンシングという競技の社会的な価値を上げ、裾野を広げたいという強い思いが伝わってきました。
「魅せ方」により、人々の認知度や注目度は変わるでしょう。私はパラスポーツの広報活動に参加し、テコンドー競技に出会いました。それまでは「韓国のスポーツ」というイメージが強く、敷居が高いと思っていました。ところが、実際に観戦、体験してみると、ルールのわかりやすさや足技の奥深さに気づきました。アーバンスポーツ化を進めることで、競技の魅力を発掘することにも繋がると思います。
勝敗の行方にとらわれず、魅せるパフォーマンスに触れたり、ライフスタイルの中で競技に取り組んだりして楽しむ姿勢は、スポーツに新しい価値を加えることでしょう。伝統を崩すことには反論もありそうですが、変革を恐れずに、より多くの人を巻き込んだ多様なスポーツのあり方が広がればいいなと思います。
参考記事:
12日付 朝日新聞朝刊 13版 24面 「(コラム 2020)黒船が開くスポーツ新時代」
時事通信 「フェンシングを満員に!太田雄貴さんインタビュー」(https://www.jiji.com/sp/v4?id=201805fencing0003)