「国家間に真の友人はいない」
フランスの元大統領、シャルル・ド・ゴールの言葉です。パワーバランスが崩れ、各国の思惑が錯綜する今、私たちは国家間の立場や考えの違いをどう乗り越えていくべきなのでしょうか。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が電撃訪中し、習近平国家主席と会談しました。
今日の各紙朝刊では、
正恩氏訪中 狙う局面転換(朝日新聞)
北、非核化に条件(読売新聞)
中朝和解 圧力路線に試練(日本経済新聞)
と一面トップで、突然の中朝サミットへの驚きを伝えています。
最高指導者となった正恩氏の外遊は、初めてのことです。中国側の発表によると、正恩氏は平和と安定の維持を望み、非核化に尽力すると語った、と伝えられています。ただし、全面的に応じる姿勢では決してありません。北朝鮮にとっては、核の問題が体制の維持と大きくかかわる、という認識があるのでしょう。非核化の主張と歩調を合わせる形で、軍事脅威の除去や体制の安全の保証、経済政策の解除などを要求していく構えを示しています。
朝鮮半島において中国の動向は大きな意味を持ちますが、中朝関係には一筋縄ではいかない難しさもあります。朝鮮戦争を共に戦い「血の絆で結ばれた同盟」とも言われてきた両国。ただし、実際には中国経済の発展や米中、中韓の国交樹立などを経て、微妙な温度差や複雑な関係が続いています。近年は核問題の影響で特に両国関係が冷え込むなか、今回の会談に踏み切りました。背景には、大国中国を味方につけ、米朝首脳会談の前に有利な国際環境を作りたいという正恩氏の策略があるとみられます。会談で十分な成果を得られなかったとしても、中国が後ろ盾にいることを示すことで自らの足場を強め、トランプ政権による軍事行動をとりにくくするという計算です。
では、中国、そして米韓が北朝鮮と対話によって向き合おうとしているこの状況をどう見るべきなのでしょうか。中国には、北朝鮮の体制崩壊が北東アジアのパワーバランスが崩すという懸念があります。また、北朝鮮が容易に核兵器を放棄するとは思えず、トランプ氏がどのような動きに出るかも未知数です。ただ、関係国のトップが顔を合わせて対話を重ねることは、外交において大切なことのように思います。各国の思惑がうごめく中でも、核兵器の放棄を強く押し出し、妥協せずに向き合っていく姿勢が不可欠となるでしょう。
協調的努力を見せつつあった米中韓の間に溝が生まれ、足並みが乱れることは絶対に避けなければなりません。だからこそ、各国間の対話の重要性を感じます。日本もまた、それぞれの国と粘り強い対話を重ねることです。圧力と対話のバランスを慎重に考え、各国が歩調を合わせられるような「かじ取り役」を担う覚悟が求められています。
参考記事 各紙「正恩氏訪中 中朝和解」関連面