最近、建築家・隈研吾さんの著書『建築家、走る』を読んで、すぐにファンになりました。代表的なものでは、新国立競技場や歌舞伎座のデザインを手がけている隈さん。
学生時代から「とにかくコンクリートに規定された20世紀の建築から飛躍したかった」といい、2000年代以降、地方や中国での仕事で積極的に木や石など自然の素材を取り入れてきました。中国の「竹の家」では、腐りやすく割れやすい竹に挑戦し、栃木県那須町の「石の美術館」では予算を絞るために使った石を薄く切って「石格子」にしました。
建築の価値とは、そのリスクをわかった上でやるかどうか。そこにしかないんです。施主と建築家がともだおれを覚悟した先に、時間軸に耐えうる建物はできるし、それが歴史となって、その場所の価値を作っていくものなのです。
この言葉が印象に残っています。
さらに、日本では建築の世界も徹底的にサラリーマン機構だ、と鋭く指摘します。
でも、本当に面白い建築、歴史に残る建築は、サラリーマンシステムからは生まれません。サラリーマン機構というのはリスク回避システムのことです。現代では建築の世界もどんどん訴訟社会化していて、いかに訴訟的な局面を回避するか、ということが仕事の主題と化している。
そんな隈さんの個展「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」が、東京駅丸の内北口の東京ステーションギャラリーで開催中です。自然の素材を生かした仕事の一部を見ることができます。今月18日まで学生は無料だったのですが、その期間を逃してしまいました。展示は5月6日まで続くので、必ず行きます。
以前から建築に興味があり、建物に入ると構造や間取りをしげしげと眺めてしまいます。建築家でもなく、大学で専攻しているわけでもないので的外れな見方かもしれませんが、「人のこういう動線を予想したのかな」などと想像するのが楽しいのです。駅や電車内も同じ理由できょろきょろとしていることがあります。度が過ぎると怪しまれそうですが。これからは、使われている素材にも目を凝らしてみたいものです。
本を読み終えてすぐ、東京都品川区の伝統画材専門店「Pigment」に行ってきました。こちらも隈さんの設計です。壁一面に並んだ顔料のグラデーションも見事ですが、天井や外装の一部を覆う竹が波打つように作られていて、胸が躍る空間でした。
建築を知るためには、まず足を運ぶことが大事なのではないかと思います。時間のある今のうちに、全国の、あるいは世界のさまざまな建築を見に行くことが目標です。
参考記事:28日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)「土着の素材でモダニズムに新風 『くまのもの』展」