カタルーニャ独立の是非を問う

 サッカーの強豪クラブチームの名前や1992年の夏季オリンピックで知られているバルセロナ。そのバルセロナがあるカタルーニャ州は今、スペインからの独立を巡り揺れています。

 今月の1日に独立の是非を問う住民投票が行われ、投票者の9割以上の賛成を得る結果に終わりました。その間、違法な住民投票を阻止しようと暴動鎮圧装備をした警官隊が投入され、住民との間で衝突が発生しました。英紙インデペンデントによれば少なくとも844人が負傷しているようです。

 9割の賛成を得た住民投票も投票率は有権者の42.6パーセントと5割を下回り、カタルーニャ内の世論調査(9月3日の時点)の結果を見ても50.1パーセントと反対派が少ないわけではないようです。実際に今月8日、州政府側が独立を宣言する可能性を危惧した独立反対派の市民たちが大規模集会を開き、地元警察の発表によれば35万人が集まりました。

 NATO事務総長を歴任したハビエル・ソラナ氏も、ニューヨークタイムズ紙にて「独立派のリーダー達は民主的な手続きを軽視している」と痛烈に非難し、ジョージ・オーウェルの言葉を引用しながらナショナリズムが強くなりすぎることに警鐘を鳴らしています。

 こうしたナショナリズムや個人のアイデンティティによる分断傾向は、今に始まったわけではありません。しかし一連のEUからの脱退騒動や中東圏での民族独立問題、またアメリカを中心とする個人主義の拡大を見ていると、急速に加速しているようにも思えます。ソーシャルネットワークの発達で「デモの呼びかけ」や「意見の発信」が簡単になったことが、こうした動きを見えやすくしているのかもしれませんが、第二次大戦や冷戦を経て成長してきた世界的な統合が減速しているのは事実でしょう。

 歴史に循環的な要素があるとすれば、既存の社会的価値観が支配的になり、それに対する反発が大きくなる分断の時期に来ているのかもしれません。もしそうであるとするならば、その挑戦が告げる終わりによって私たちの生活が一変させられるかもしれませんね。

参考記事:
9日付 朝日新聞朝刊(東京14版)7面(国際)「独立反対派が集会」
同日付 読売新聞朝刊(東京14版)9面(国際)「バルセロナから「本社移転」の動き」
1日付 英紙Independent ”Catalan independence referendum: Massive majority votes ‘Yes’, regional government says”
9月28日付 The New York Times “Catalonia’s Drive to Vote on Independence”
9月3日付 EL Español “El 50,1% de los catalanes está a favor de la independencia, el 45,7% en contra”