政府・与党は臨時国会を今月28日に召集する方針を決めました。この国会での最大の焦点は、長時間労働を是正する働き方改革関連法案です。一部の専門職を労働時間などの規制から外し、成果で報酬を決める高度プロフェッショナル制度の創設も含まれることから、与野党の論戦が激しくなりそうです。
さて、最近「働き方改革」という言葉をよく耳にします。定時で退社する、有給休暇をたくさん取る、などが一種の「ブーム」になっています。また、近頃はツイッターなどウェブ上で、お盆やゴールデンウィーク、年末年始などの大型連休の時期になると「社会は休みだが俺は出勤」「私の会社はブラック」などの投稿を見かけるのが日常茶飯事になりました。
当たり前のことですが、24時間365日どこかで誰かが必ず働いています。それは誰かの生活や仕事、その先にある幸せを支えること以外の何物でもありません。お盆になれば多くの人が帰省するため交通に従事する人は大忙しですし、休日前夜は居酒屋やタクシー業界にとっての書き入れ時。大みそかには渋谷のスクランブル交差点には雑踏の混乱を防ぐため大勢の警察官が配置されます。
「定時退社至上主義」や「休日出勤絶対反対」になってしまうと、逆に多くの人が休んでいる時間帯に一生懸命働いている人はブラック企業に属していることになってしまわないでしょうか。もちろん、そんなわけはありません。自らや家族の生活のために淡々と働いているだけなのですから。
少し極端な考えかもしれませんが、定時退社を目指しながら休日出勤などを痛烈に批判する人は「僕は定時退社したいけど、今まで通りのサービスは享受したいから必要な人は働いてね」と言っているようにも聞こえてしまいます。これではご都合主義の極みです。
彼らが定時退社して利用する輸送機関では運転手や駅員がまだ働いていますし、夜テレビを見て楽しむ裏ではテレビ局のスタッフやメンテナンスにいそしむ電力会社の職員がいます。本当の働き方改革というのは、定時退社ブームの盛り上げや休日出勤撲滅ではなく、「働きたいときに必要な分働き、休みたいときに必要なだけ休む」。こんな単純なことに落ち着くはずなのです。
僕は考えすぎでしょうか。
参考記事:
16日付 読売新聞14版 1面「臨時国会 28日召集 「働き方改革」焦点」