まず初めに解党の決断を

 2009年夏、当時の自民党政権への批判から民主・社民・国民新党(当時)による連立内閣が発足し、政権交代が起きました。「無駄撲滅」や「天下り根絶」「普天間基地の辺野古移設撤回」など耳に心地いいマニフェストを並べ、国民の期待は最高潮に達しました。しかし、いざ政権運営が始まると、予算の効率化を約束しながら目標には程遠い無駄の削減しかできない、普天間基地問題は沖縄県民の期待を高めておきながら、結局は辺野古移設に落ち着く、などという混乱ぶりが忘れられません。当時の鳩山総理がアメリカのオバマ大統領に「Trust me.(私を信じて)」とささやいた結果としてはあまりにもお粗末でした。

 野党に転落後、みんなの党(当時)や維新の会(当時)の一部議員が合流した結果生まれた民進党の蓮舫代表の辞意を受けて、新しいトップを決める民進党代表選が告示されました。22日には前原誠司・元外相と枝野幸男・元官房長官による討論会が開催されました。消費増税に対するスタンスの違いや憲法改正、共産党との選挙協力への姿勢など、互いの主張が比較されました。

 しかし、筆者は思うのです。今の民進党のトップに真っ先に求められているのは、自らの主張を強調することではなく、身を切る覚悟とその決断であると。その覚悟と決断というのは、ずばり民進党の解党です。5年前、当時の民主党政権が崩壊した最大の要因は、党内のまとまりの悪さにあったはずです。例えば憲法改正や安全保障分野において積極的な保守派から消極的な革新系まで、右から左まで議員がいます。そのように対極にいる人たちが真逆を向いている状況では、一つの目標を見据えてまとまることなどできるわけがありません。今に続く党勢の低迷の要因にもなっているように思えます。

 保守も革新も互いの主張の是非はひとまず置いておき、自らの政策信念や主張に賛同する者同士が集まる、という本来の政党の姿を描いて、痛みを伴う決断をしなければ、今の政治に欠けている「健全な野党」はずっと現れないのではないでしょうか。

 今の状況、つまりとりあえず主だった議員の議席を維持し、国会議員であることを死守するのが目的なら現状維持も悪くないでしょう。しかし、今の日本を本当に変えたい、こういう政策が必要である、という政治信条があるならば、それを実行するのが筋であると思います。今までの代表選で候補者が口々に言ってきた「ラストチャンス」は、これで最後にしてもらいたいものです。

参考記事:

23日 読売新聞朝刊(14版)4面(政治) 「財源論「最大の違い」 民進代表選討論会」