情報は命、取扱注意

 またも空手の話で始まることをご容赦ください。先日、空手の大会に出場してきました。相手を想定して演武する「形」や実際に相手と戦う「組手」があります。中でも盛り上がったのが、「団体組手」でした。1チーム3人で先鋒、中堅、大将の順に戦い、勝ち数の多いチームが勝利します。対決順などでチームの勝敗が大きく変わるため、個々の実力で勝っているチームが負けることも少なくありません。相手の出方を想像して、こちら側の順番を決めるもよし、相手に惑わされず、出方を変えないのもよし。コートに並び、相手の順番が分かった時の興奮はたまりません。

 もし、試合の前に、自分たちの出方を相手に知られてしまったら、どうでしょうか。

 朝日新聞の朝刊には

出版取次会社「トーハン」が週刊新潮(新潮社)の中づり広告をライバル誌である週刊文春(文芸春秋)側に渡していたことが、トーハンへの取材で分かった。(中略)同社は「他社に関する情報なので配慮すべきだった」として、今後は取りやめることを検討している。(中略)一方。文芸春秋は取材に対し「情報を不正あるいは不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したなどの事実は一切ありません」と文書で回答した。

との記事がありました。

 文芸春秋は記事の書き換えや盗用はないと言っていますが、実際に中づり広告を手に入れていた以上、疑われても仕方ありません。

 問題なのは、出版取次会社が新潮社から得た情報を文芸春秋に渡していたことです。雑誌において記事は命といっても過言ではありません。その重要な情報を発表前に他社に流してしまうことは裏切り行為のように見えます。出版取次会社は扱っている情報の重さについて改めて考えてほしいものです。

 そして、私たち個人もSNSなどの情報をワンクリックで拡散している、いわば取次のよう存在になりつつあります。情報の取扱いには注意が必要であることを自戒しなければなりません。

参考記事
17日付 朝日新聞 14版 38面 「新潮の中づり広告 文春に渡す」