学生の皆さんは、奨学金制度を利用していますか。筆者は、貸与型と給付型の両方を利用して、大学に通う学生の一人です。奨学金制度がなければ、上京して私立大学の学費と家賃を払うことは難しく、今の大学への進学を諦めていたと思います。
もちろん、卒業後に数百万円の借金を背負うことへの不安はありますし、その重みも痛感しています。それでも全国から集まった仲間たちとともに刺激を受けながら、学びたい分野の勉強ができる環境に喜びを感じています。自分の意思を尊重して背中を押してくれた両親に感謝していますし、奨学金という支援を受けていることが、勉強のモチベーションにもつながっています。今日は、昨今様々な改革が行われている奨学金制度について考えます。
今朝の紙面には、私立大学の独自の工夫が紹介されていました。例えば、立教大には経済的な理由で入学が難しい首都圏外の出身者を対象とした、奨学金制度があります。大きな特徴は、入学前に給付の採否がわかる『予約採用型』であること。入試期間内に申請しますが、基準を満たしていると、合格すれば奨学金をもらえるという保証があるため、安心して受験できるのが強みです。このほかにも、出費がかさむ入学前に給付を受けられたり、卒業生や賛助企業からの寄付を財源とした奨学金を増やしたりする動きがあります。
関西大の馬場圭太・学生センター副所長は「寄付奨学金を得て卒要した学生が『今度は後輩のために』と支援をつなげるような仕組みができたらいい。」と話します。
大学だけでなく、自治体が主体となって奨学金制度と地方活性化を結び付ける取り組みも登場しています。長野県では、大学や専門学校の学生を対象に、Uターンを条件とした奨学金制度が導入されました。給付や貸与を受ける代わりに、卒業後に一定期間、市や村への定住や勤務を義務付けるというものです。さらに、地域で不足する医療や消防団などの、職種や人材を確保するための奨学金を創設する動きも広がり始めています。
このように多様な工夫を凝らしながら、無利子の貸与型や給付型の奨学金制度が広がりつつあるのは素晴らしいことだと思います。進路を考える際には自分に合った奨学金を主体的に探す姿勢も、大切にしてほしいです。
昨年、国は返済が不要な給付型を主とする制度改革を打ち出しましたが、枠は狭く受給者は限定的でしょう。学びたいという意志を持つすべての若者に、高等学校、そして大学や専門学校に行く機会を与えてほしい。また、自分の興味にあった分野や将来を見据えて、学校選びの選択肢を増やしてほしい。そのためには官民協働による奨学金のさらなる拡充に加え、学費の値下げや所得に応じた学費の設定も検討すべきではないでしょうか。
参考記事:18日付 朝日新聞 13版 30面「私立大、奨学金で家計応援 収入要件に重き、支給時期に工夫も」
18日付 日本経済新聞 地方ニュース「U・Iターンで不足人材確保 長野県内、奨学金新設・拡充相次ぐ」