安倍首相のポリシー「Never up, Never in」

 ゴルフの世界には「Never up, never in」という格言があるそうです。筆者はゴルフに疎いため、はじめて聞いた言葉です。意味は「届かなければ、決して入らない」。ボールがカップを通り過ぎてしまうのではと恐れて、弱く打つようではチャンスをものに出来ないことを表現しています。安倍首相はゴルフをする時、この言葉をポリシーにしていると述べました。

 今回の日米首脳会談では、トランプ米大統領は安倍首相を手厚くもてなしました。10日、ホワイトハウスに到着した時にはハグ、会談前の写真撮影では19秒に渡る固い握手をしました。トランプ氏は「ハグしたのは、そういう気持ちになったからだ。私たちはとても相性がいい」と首相に語りかけました。週末を過ごすフロリダ州への移動も大統領専用機に同乗、別荘では夕食会。11日には、ゴルフを楽しみ、友好を深めました。

 安倍首相のポリシーは、ゴルフだけでなくトランプ氏との関係にも功を奏しているのではないでしょうか。今後の日米同盟も前向きなものになったように思います。

 沖縄県の尖閣諸島がアメリカの対日防衛義務の範囲であることを確認しました。また、経済面では麻生副総理・財務相と、環太平洋経済連携協定(TPP)への賛同を表明しているペンス副大統領による経済対話を新設することが合意されました。今後、マクロ経済政策の連携やインフラ、エネルギーなどの協力、2国間貿易の枠組みをテーマに協議されます。

 ただ、一方でTPPや自動車貿易については今一歩といった印象です。安倍首相はTPPが持つ経済的・戦略的意義や、日本の自動車メーカーが米国工場での生産を通じての雇用に貢献していることについてトランプ氏に説明しただけにとどまりました。

 ここは、安倍首相はポリシーを持って臨んでほしいものです。要求することをしっかりと伝えなければ、先方のいいように運ばれてしまうのではないかと不安です。そう思うのも、今回の親密さもトランプ氏の得意な「ポスト・トゥルース」、つまり実際には裏付けのない言動で首相の気持ちを緩ませただけで、今後は一転して厳しい外交攻勢を仕掛けてくるのではないかと感じるからです。

参考記事
2月12日付 各社 日米首脳会談関連記事