27日午後、安倍首相が真珠湾を訪れました。今年5月に実現したオバマ米国大統領の広島訪問に続く、歴史的な出来事だと、多くの人が彼の現地での演説に注目していたことでしょう。
演説の中で、首相は「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない」と不戦の誓いを述べ、オバマ氏と共に日米間の「和解の力」を強調しました。以前から示されていたとおり、真珠湾攻撃に対する謝罪や、自らの歴史認識への言及はありませんでした。その政治的意図や謝罪の是非、演説内容と実際の政治的姿勢との齟齬など、様々な意見や反論が考えられますが、このようなことが実現したこと、それだけで大きな一歩であるように感じられます。
しかし、これを「戦後の終わり」にしてはいけません。日本経済新聞によると、首相周辺は「開戦の地で和解の力を示した。これでthe very end(最後の最後)だ」と語ったそうです。一方、25日、安倍首相の真珠湾訪問を前に、映画監督のオリバー・ストーン氏や日米の歴史学者ら計53名が公開質問状を提出しました。
質問状は、1941年12月8日に日本が攻撃した場所について、「真珠湾だけではありません」と指摘。安倍首相は真珠湾攻撃で死亡した約2400人のアメリカ人の慰霊のために訪問することを挙げ、「それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の『慰霊』にも行く予定はありますか」などと尋ねている。
ハフィントンポストより
太平洋戦争時、真珠湾に仕掛けた奇襲攻撃は、当時の日本軍の卑劣さの代名詞とされ、日米間の確執を生んできました。首相がこの地を訪れることは、日本の太平洋戦争への姿勢を示すための、高いけれども越える必要のあるハードルでした。けれども、質問状で指摘されているように、日本が攻撃した地はアメリカに限りません。そういった地への慰霊なくして、戦後を「終わらせる」ことはできないのではないでしょうか。
真珠湾訪問は、戦後の歴史の中で大きな意味を持つ一歩ではあります。しかしこれはゴールに向かう歩みの一部であり、ゴールインを意味するものではありません。沖縄の基地問題、アメリカ以外の戦地の慰霊と、まだまだ「戦後」を物語る問題は山積みです。手放しでは喜べない、と感じる人々がいるのも当然でしょう。真珠湾での慰霊が達成された、それならば次は、どうすれば良いのか。
まずは、大きな一歩を踏み出せたことに安堵を、そして今後さらに歩み続けられるよう、次の一歩についても考えていかねばなりません。一つの山は越えました。ですがそれは、もっと大きな山なみの一部でしかないのです。
参考:29日付 各紙朝刊 真珠湾訪問関連記事
ハフィントンポスト(2016年12月29日18:00時点)「安倍首相へオリバー・ストーン監督ら公開質問状『日本が攻撃したのは真珠湾だけではない』」