もし、あなたが真珠湾に訪れたなら

「あの場所では、やはり日本人の肩身は狭かった。」私が小学生のころ、担任の先生が真珠湾について話をしてくれたことがありました。先生はその昔、真珠湾に訪れてそのように感じたそうです。戦争は過去のものとなっても、その場所に残された苦しみや恨みは簡単にはなくならないのか。先生の神妙な面持ちを前に、子どもながらに考えたことを憶えています。

日本政府の代表は何を感じ、何を考え、何を語るのでしょうか。安倍首相は5日、今月2627両日に米ハワイを訪問し、オバマ大統領とともに真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊する意向を表明しました。現職首相の真珠湾訪問は初めての試みとなります。今年5月にはオバマ大統領が被爆地の一つである広島を訪問しており、日米首脳が太平洋戦争の象徴的な場所を訪れあい、戦後両国が強固な同盟を築いたと内外に訴える狙いもあると見られています。

「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。未来に向けた決意を示したい」「日米の和解の価値を発信する機会にもしたい」安倍首相はこう語り、真珠湾訪問の意図を説明しました。先日のアメリカ大統領選により、民主党から共和党への政権交代が決まりました。今後の日米関係を見据え、日米同盟の意義のアピールやオバマ氏の広島訪問の「お返し」的に捉えられていることもまた事実です。

政治的な意図が背後にあったとしても、両国首脳が互いの戦地を訪れ、平和への誓いを立てる。そのこと自体が意義深いものであり、歴史的な出来事と捉えることはできないでしょうか。日米両首脳には、それほど大きな影響力と大きな責任があるのだと思います。今年は真珠湾攻撃から75年の節目の年です。これから幾年が過ぎようとも、戦場となった場所から悲しみが消えることはないでしょう。真珠湾でも、広島でも、お互い肩身の狭い思いをし続けるのかもしれません。それでも、そうだとしても、その地を訪れ、事実を受け止め、肩身を狭くし合い、同じ人間として深く反省をする。そのことが今を生き、未来を創る私たちの義務であるように感じます。安倍首相の訪問時、何を語るかに注目が集まります。もし自分があの場に立ち、今を生きる人間として事実を受け止めたなら、何を語ることができるのだろうか。一度そのようなことも考えてみたいと思います。

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