「何でもシェア ミレニアル世代 消費の敵か味方か」。8月16日付けの日経新聞朝刊1面の見出しです。中国・上海の自転車のシェアリングサービスや、米国サンフランシスコの自動車のシェアサービスを紹介する記事が印象的でした。東京では、服のレンタルサービスを利用する都内の女性がとりあげられていました。日本国内でも、さまざまな課題はありますが「シェアリングエコノミー」の存在は大きくなっています。
ソフトバンクも、シェアリングサービスに取り組む企業向けのIT(情報技術)事業に参入します。IoTの技術と携帯通信網を活用し、遠隔操作できる鍵やスマートフォンの予約アプリなどを提供します。第1弾として、シェアサイクルの事業者向けサービスを始めるようです。好きな場所で自転車を借りたり返したりできるシェアサイクル向けに、ソフトバンクは市販の自転車に取り付けることができる遠隔操作用の鍵と解除に必要な暗証番号の入力装置を開発しました。予約や決済に必要なスマホアプリ、会員管理のクラウドサービスなど事業に必要なシステムも用意しています。初期費用を抑えて都心部や観光地などの需要を狙い、駐車場予約サイトを運営するシェアリングサービス(東京・新宿)が、11月にもソフトバンクのサービスを利用するシェアサイクルを東京都内で始めます。
矢野経済研究所(東京・中野)は、シェアリングサービスの国内市場は2020年度に15年度の2倍以上の600億円に拡大すると予測します。ソフトバンクは、電動バイクなどのシェアサービス向けにも事業を広げ、関連サービスで海外展開も目指しています。今後、ますますシェアリングサービスは私たちの生活に必要なものとなるでしょう。
気になるのは「消費市場の縮小」です。冒頭の記事では、月額制レンタル衣料サービスを手掛けるエアークローゼットの天沼聡社長(37)が「シェアと実店舗は競合しない」と述べています。「服を借りることでそのブランドに関心を持ち、店舗にも運ぶ。シェアは消費のきっかけになる」そうです。ですが、何かを借りたことで消費へつながるのは、一部のモノに限られるような気もします。「シェアサービスで借りた車や自転車が気に入ったから、実際に買おう」というケースは少ないでしょう。日本の総人口が、大正9年に国勢調査が始まって以来初めて減少したというニュースは記憶に新しいでしょう。人口が減る国内で消費など見込めない。そのような状況でシェアサービスが台頭。さらに「消費の縮小」を加速させてしまうのでは、と考えてしまいます。
「何でもシェア 消費の敵か味方か」。もちろんはっきりとした答えは、今はまだ出ないと思います。シェアサービスの拡大によって、恩恵を受ける業界とそうでない業界は大きく別れそうです。「シェアリングサービスの台頭」という時代の流れに、企業がどう共存していくかが今後のカギになるのではないでしょうか。「シェアも消費も拡大」、そんなサービスが生まれることを願います。
参考記事:
29日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)13面(企業・消費)「相乗り・民泊『シェアエコノミー』 ソフトバンク ITで参入 まず自転車カギ・アプリ」
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