過労自殺はなぜ減らないのか。なぜなくならないのか。

入社1年目、希望とやる気に満ちていたはずの新入社員が、なぜ自殺しなければならなかったのでしょうか。7日、原因は長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められたことが明らかになりました。昨年、当時24歳の女性新入社員は、広告大手の電通に勤務しインターネット広告を担当する部署に配属されていました。自動車保険などの広告を担当し、クライアント企業の広告データの集計・分析などが主な業務でした。業務が大幅に増えたのは、試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降。部署の人数が14人から6人に減ったうえ、担当する企業が増加。社内の飲み会の幹事や、飲み会の後の「反省会」は深夜まで続きます。月100時間を超える時間外労働をこなすなかで、女性は上司から「君の残業時間は会社にとって無駄」などと注意されていたといいます。

電通では、1991年にも入社2年目の社員(当時24)が自殺。電通は当時、会社としての責任を認めませんでしたが、003月の最高裁判決は「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする義務がある」と認定。過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れをつくりました。電通はその後、遺族と和解し責任を認めて再発防止を誓ったはずでした。

また、「過労死・過労自殺のない社会を作りたい」という遺族の願いから生まれた過労死防止対策推進法が2年前に施行され、7日には初の「過労死防止対策白書」が閣議決定されました。にもかかわらず、なぜ過労死や過労自殺は減る兆しを見せないのでしょうか。白書では、過労死の防止策を進める責任が国にあることを明記しています。労働者約2万人に対する長期間の追跡調査や、長時間労働と健康に関する研究を始める計画も盛り込みました。しかしながら、企業約1万社を対象に実施した調査も回答は1743社にとどまり、国の調査やコントロールは、まだまだ企業に行き届いていないように思えます。そもそも、国が企業を管理や指導するという枠組みだけでは、この問題は解決しないのかもしれません。企業の中から、実際の現場の様子を把握した人材が改善に向かわせられるような、人材育成なども求められているのではないでしょうか。国対企業という構図ではなく、内部から過労という膿を吐き出させる取り組みが大切になるように感じます。

参考記事:8日付朝日新聞朝刊(東京13)1面「電通社員の自殺労災認定」他関連記事