大学1年生の時に税務署でアルバイトをしたことがあります。確定申告の記入操作のお手伝いです。「こんなに働いたのにお金を取られるなんておかしい。」と文句を言われたり、逆に「こんなに戻って来るんだ。ありがとう。」と感謝されたり。税によって家計が左右されます。税の仕組みやルールに関心が高まるのは当然でしょう。
税の仕組みは、大掛かりか微調整かは別にして、年ごとに改正されています。この税制改正の論議で、いま焦点となっているのが「配偶者控除」の扱いです。現行では、配偶者が働いていても、その年収が103万円以下であれば実質的に税金がかかりません。
今年の税制改正では、配偶者控除での年収要件を「150万円以下」に引き上げる仕組みを軸に検討が進むそうです。私は、配偶者控除をより時代に合った制度に変えるべきだと思います。専業主婦が当たり前だった1961年にできましたが、今は、共働きの夫婦も増えています。同性婚・事実婚のカップルも制度の恩恵は受けられません。家族や働き方が多様になっているのだから、見直しは当然のはずです。
9月11日の読売新聞の社説では次のように指摘をしています。
控除対象者が増えて税収が大幅に減るのを防ぐには、高所得者を除く線引きが必要だ
8月下旬に各社とも「2017年度税制改正では所得税配偶者控除の見直しを検討する」と報じています。 自民党税制調査会の宮崎会長のインタビューを読み、難航しても本格的な大改正になるのだと思っていました。
過去にも政府税制調査会は見直しに動いたことはあります。しかし、それは政府自らに大きな価値判断が求められることでもあります。つまり、夫婦の一方が子育てや家庭に専念をし、もう一方がお金を稼ぐという分業を前提に制度を設計するのか、共働きで分担してもらう方が望ましいのか。
専業主婦やパート女性を刺激するような政策を打ち出せるはずもなく、結局はお蔵入りになっています。今回も先送り。税務署の窓口では笑顔になる人、納得がいかない人の両方をみることができました。何か決めるには一定の線引きが求められます。うまく対象から逃れる人もいれば、新たに負担を受ける人も出てきてしまうのは避けられません。
政府が苦しい立場なのはわかります。税制の見直しだけやればいいということではありませんが、反発を恐れずに取り組んで欲しかったものです。少しでも幅広い人が納得のできる制度に近づくことを願っています。
参考記事:
10月7日 日本経済新聞 朝刊1面 「配偶者控除、存続し要件拡大 世帯主の年収で制限案」
9月11日 読売新聞朝刊3面 社説「配偶者控除 幅広い層が納得する見直しを」