ベイスターズ・エール、青星寮カレー、ベイカラ。横浜DeNAベイスターズの本拠地、横浜スタジアムの球場名物です。球場で売り子から買うビールには特別感がありますが、ベイスターズ・エールはさらに特別です。球場内とその周辺でしか飲めない地ビールなのです。
筆者も9月に横浜スタジアムへ足を運びました。ファンではありませんが、友人と観戦しました。ファンでもないのにわざわざ、とお思いの方も多いでしょう。球団が仕掛ける人気の謎に触れてみたかったのです。今、横浜スタジアムのチケットはなかなか手に入らないほどの人気ぶりです。そのわけは、チームが強い、というだけではありません。冒頭に挙げた地ビールや、選手寮の味を再現した青星寮カレー、人気店とコラボしたから揚げ・ベイカラなど、多くの新名物を打ち出しているからだと思いました。また、勝利した試合後には、グラウンド内で打ち上げられる花火とイルミネーションのコラボを見られるビクトリーセレモニーも開催されます。野球も観に行くだけではなく、テーマパークに遊びに行ったような楽しさを味わえるのが魅力なのかもしれません。
野球離れが叫ばれる中、横浜のように各球団がさまざまな取り組みを始め、収益を上げています。ただ、球団ごとの戦略だけではカバーしきれない部分があることも事実です。球界全体に取り組む課題があります。それは「ネット配信」です。
パ・リーグ6球団の共同事業会社は「パ・リーグTV」を運営し、インターネットで中継配信しています。プランにより異なりますが、月額1,000円程度でパ・リーグ全試合を見ることができます。いつでもどこでも見られることから会員は7万人まで伸ばしているそうです。しかし、このサービスはパ・リーグだけ。セ・リーグでは行われていません。これからファンをさらに増やしていくためには、球界全体でネット事業を進めていく必要があります。そこで大きな問題になるのが放映権。放映権は各球団が個別に管理しており、メディアを親会社に持つ球団もあることから、話がうまく進まないのが現実のようです。
アメリカの大リーグでは、公式アプリ「MLB.com」での試合結果を見ることができるほか、中継動画の視聴やラジオ中継を聞くこともできます。球場の地図を見るのも、チケットやグッズを買うのもここから。1つのアプリ、サイトですべてのことができる優れものです。30球団すべてが協力したからこそできることでしょう。
今、球団個々の努力によって伸ばしている人気をこれから加速させるためには、球界の連携が欠かせません。12球団が手を取り合って、不断の人気と稼ぐ力を築いてほしいと願います。
参考記事:
4日、5日、6日付 日本経済新聞朝刊(東京13版) 連載「球団ビジネス2.0」