コンビニの、サービス展開どう変わる?

   「日本人はこれだけご飯を食べるのだから、売れないはずはない」。セブン&アイ・ホールディングスの名誉顧問、鈴木敏文さんは、1974年、開業当初のセブンイレブンを振り返ります。「おにぎりは家でつくるものだ」と、店頭に並べることを周囲からは反対されたそうでうす。しかし、のりをフィルムではさみ、食べる直前に巻く方法を考えたことで、大ヒットしました。今では全国の店で年間21億個売れています。

 暑い日にはアイスコーヒーを、小腹が空いたらお菓子や軽食を。私もよくコンビニを利用します。競争が激しくなる業界ですが、今後、勢力図が変わるかもしれません。今月1日、コンビニ3位のファミリーマートと、4位のサークルKサンクスが経営統合しました。それに伴い、ファミリーマートは2017年春をメドに、傘下の「ファミリーマート」「サークルK」「サンクス」の商品も統合します。遅くとも19年2月末までにコンビニの看板をファミリーマートに一本化する計画ですが、商品は前倒しで共通にすることで仕入れや物流のコストを減らします。

 まずは、おにぎりやサンドイッチなどの軽食を除く商品について、12月までに統合する方針です。統合後はファミリーマートの商品が軸となりますが、サークルKやサンクスで販売が好調な焼き鳥などの商品は残します。

 コンビニ業界の店舗シェアは大きく変わります。8月までの全国ベースでのシェアは、1位がセブン-イレブン、2位がローソン、続いてファミリーマートでした。しかし、9月以降はサークルKサンクスがファミリーマートの陣営に加わったため、1位セブン-イレブン、2位がファミリーマート+サークルKサンクスとなり、ローソンが3位に下がります。

 筆者は、「店舗数拡大」にのみ注力するのではなく、「顧客満足度」も注視するべきだと考えます。北海道を中心に店舗を構えるセイコーマートは、全国展開もしていません。それでも、2016年度JCSI(日本版顧客満足度指数)のコンビニエンスストア部門において、セブン-イレブンやローソンなどを抑えて顧客満足1位を獲得しています。

祖父母が北海道に住んでいるので、北海道に行く際には必ずセイコーマートに寄ります。道内限定の商品が並んでいることも魅力ですが、何よりお惣菜やお弁当の味の質が違います。また、豚肉を使用した「焼き鳥弁当」などは、一種の「ご当地グルメ」化しています。店舗数のみでなく商品の質の向上を目指したり、地域の顧客のニーズをしっかり汲み取ったりすることが大切です。
 
 これ以上全国展開をしようにも、既に飽和状態にあるコンビニ業界です。そんななかで、今後どのような新規事業やサービスが展開されるのか楽しみです。一方、業界2位に躍り出たファミリーマートとサークルKサンクスは、これに満足することなく顧客獲得のための努力を忘れないでほしいものです。冒頭の鈴木さんのエピソードからも分かるように、「既存の枠に捉われないサービス展開」が大ヒットにつながります。

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統合に伴い、キャンペーンを行うファミリーマートの店舗。大阪市中央区にて、筆者撮影

参考記事:
14日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)13面(企業・消費)「ファミマ・サークルKサンクス 商品、来春めどに統合」

関連記事:
9月8日付 朝日新聞夕刊(大阪3版)5面「人生の贈りもの 私の半生」セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問 鈴木敏文(83)

参考資料:
2016年JCSI(日本版顧客満足度指数)コンビニエンスストア部門