先日、古都奈良に足を運びました。筆者が訪れたのは、鹿で有名な奈良公園の近く。活気溢れる昔ながらの商店街があり、古都の町並みが残るならまちに続くエリアです。市街地の最寄り駅である近鉄奈良駅で下車し、広がる光景に驚きました。インバウンドの観光客ばかりなのです。数年前に訪れた時と比べて、外国人観光客が飛躍的に増えていることを実感しました。
実際、奈良県を訪れる訪日客の数は増加傾向にあります。26日付の読売新聞朝刊では、2024年に奈良市を訪れた観光客の数は、1487万人で前年に比べて21.9%増加したことが市の調査で分かったとしています。また、外国人訪問者は297.7万人で前年より61.4%増加しているそうです。
観光客の増加に伴い近鉄奈良駅からすぐの商店街は、新しいお店がオープンしていたり、人通りが増えていたりと、以前よりも活気が溢れているように感じました。商店街に設置されている来訪者マップを見ると、国内外から多くの人が訪れていることがよく分かります。
(商店街に設置されている来訪者マップ、8月25日筆者撮影)
その一方で、観光客の振る舞いに疑問の声が上がることも少なくありません。昨年、観光客が奈良公園の鹿を蹴る動画がSNSで拡散され物議を醸しました。この事態に、奈良公園を訪れた観光客らに鹿との適切な接し方を知ってもらおうと、奈良の鹿愛護会のメンバーやDJポリスらが公園周辺で啓発活動を始めるなど対策が練られています。
奈良公園の近くは、鹿が共存する特殊なエリアです。そのため、観光客の増加に伴い、マナーの啓発をはじめとした対応が必要だといえます。一方、訪問客が多くなることで、観光地として活気が増すなど良い影響もあります。SNS上では、マイナスな側面ばかりが一人歩きしているように感じます。様々な問題に手を打つ必要はありますが、プラスの影響があることにも目を向けることが大事だと考えます。
古都奈良の観光における課題は他にもあります。それは、1人あたりの観光消費額が全国平均に比べて低いことです。奈良に宿泊する観光客が少なく、ほとんどの人が日帰りで訪れることなどが要因として挙げられます。24年のデータでは、日帰りの観光消費額は4983円です。前年を上回る記録とされていますが、全国的な平均に比べると低水準といえます。
奈良観光の多くは、奈良公園や東大寺の大仏といった有名スポットに焦点を当てられがちだと考えます。しかし、魅力は他にもあります。この時期、特に筆者がおすすめしたいのが「かき氷」です。
(近鉄奈良駅付近の店が提供するかき氷、蜂蜜レモン味、8月25日筆者撮影)
(近鉄奈良駅付近の店が提供するかき氷、キャラメル味、2022年7月筆者撮影)
奈良は、かき氷激戦区と呼ばれ、専門店をはじめかき氷を提供するお店が多く建ち並びます。お店ごとに珍しい味のものや、ビジュアルにときめくものまで多種多様。暑い夏に食べるかき氷は絶品です。このように定番の奈良観光とは違う古都の魅力はまだまだあります。そういったひと味違う一面がより多くの人に伝わり、観光地奈良が抱える課題解決に一役買うことを期待したいものです。
参考記事:
2025年07月18日付 朝日新聞朝刊(教育科学)「(扉)奈良のシカ巡る生態系がいま 独自遺伝子型に危機/森の多様性阻む食害」
8月26日付 読売新聞朝刊「奈良市観光客 1487万人 24年 宿泊者 過去15年で最多=奈良」
8月27日付 読売新聞オンライン「「鹿せんべいはすぐに与えること」奈良のシカと接する虎の巻、多言語で観光客に配布」
参考資料:
MBSNEWS「【中継】かき氷激戦区の奈良で1時間待ちの行列も!陶芸工房で『高級抹茶・奈良のブランド苺』の手作りシロップたっぷり絶品かき氷を堪能!」
MBSNEWS「『奈良の観光は、安い・浅い・狭い』マイナス面を三拍子で…こんな結論は誰が作った?奈良県観光戦略本部に聞くと」