フードバンクって、どんなところ? ―「フードバンク京都」の取り組みから―

前回は「食」にとどまらず支援の形を拡大しつつある「空き家バンク京都 子ども食堂」について取り上げました。

↓前回の記事はこちらからご覧になれます。

http://allatanys.jp/blogs/27324/

 

今回も引き続き「食支援」について考えます。子ども食堂や支援を必要とする人たちに「食」を届けるフードバンク活動に注目しました。そこでは実際どのような活動をされているのでしょうか。「フードバンク京都」スタッフの山村さん、図師さんにお話を伺いました。

 

【主な活動内容】

主に5つのボランティア活動から成っています。

 

1.配送ボランティア

車で緊急支援である行政や地域包括支援センターなどへ食品を届けたり、協力企業からの食品の受け取りを行っています。

▲配送の様子

(フードバンク京都ホームページから)

 

2.営業ボランティア

新しい提供元や寄付者を開拓しています。

 

3.仕分けボランティア

企業や個人からの寄贈品などを支援先別に仕分けしています。他にも精米や倉庫の整理などもしています。

▲仕分け作業の様子

(フードバンク京都ホームページから)

 

4.畑ボランティア

自然農法で農薬・化学肥料を使用せず、野菜を育てています。

▲フードバンク農園

(6月29日 筆者撮影)

 

5.集計ボランティア

寄付のあった食品や、届けた食品の重量の記録、報告を行っています。

 

今回、筆者は京都市西京区での畑作業に参加させてもらいました。筆者の祖父は山で野菜を栽培しており、よくお手伝いをしていました。そのため、久しぶりの農作業が非常に楽しかったです。スタッフの皆さんが一から作業を教えてくださり、時間を忘れて夢中になりました。

 

 

【「フードバンク京都」が出来るまで】

立ち上げは2015年です。翌年からは、レトルト食品だけでなく、新鮮な野菜も届けたいとの思いから畑でのボランティア活動をスタートさせました。農園は元々は田んぼで水はけが悪かったそうです。そんな中、理事長の高畠さんが京都市内の農学校SFCの先生と知り合い、週に1度、農作業を教えていただきました。現在は、スナップえんどうや茄子、ズッキーニ、トマト、スイカなど沢山の野菜を栽培しています。

  

▲栽培されていた茄子(左)とズッキーニ(右)

(6月29日 筆者撮影)

 

【「フードバンク京都」ならではの魅力】

「フードバンク京都」ならではの魅力についてお聞きしました。

 

山村さん

緊急支援では食材を必要としている人のために、行政から来た情報を元にオーダーメイドの形で提供しています。この作業に毎回30分から1時間かけているのは、開けた時のワクワク感を大切にしているからです。一人一人に手書きのお手紙を添え「食を通じて少しでも元気になってくれれば」との思いも込めています。

 

筆者

フードバンクとして畑作業されている点も非常に珍しいなと感じました。

 

山村さん

新鮮な野菜はやっぱり喜んでもらえます。緊急支援を必要としている人の中には料理が難しい方もいるので、  特にすぐに食べられるトマトやキュウリは喜ばれます。

 

 

【現在の課題】

緊急支援だけでなく、子ども食堂や児童施設、ホームレスの方にも支援を行う「フードバンク京都」ですが、課題もあります。

緊急支援は年間平均700件ほどの要請があるそうです。今年5月には1か月間で110件もの依頼がありました。「フードバンク京都」のボランティアは全体で90人ほどいますが、コアで動けるのは2、30人ほど。そのため配送ボランティアの人手不足が特に深刻であり、配送業者に頼むこともあると言います。

また、運営に必要不可欠な助成金ですが、必ずしも貰えるというわけではありません。申請が通れば受け取れるという形のため、毎回申請書を書く大変さもあります。

 

 

【「フードバンク京都」の運営を通じた喜び】

「フードバンク京都」を運営していく中での喜びについて伺いました。

 

山村さん

80代の男性でがんの入院費でお金を使い、生活に困っていた男性がいたんです。その人が「新鮮な野菜が届いて、どうやって調理しようと考えているうちに生きる気力が出てきた」っていうお手紙をくれたんです。届けた先の人たちの声を聞けたことが凄く嬉しかったですね。

 

また、22年に朝日新聞で活動の様子が取り上げられたことでボランティアに来てくれる人や食品の支援をしてくれる人が増えたそうです。

 

現在は週に2~3回、高知で給食用の食品を配送している業者の人たちが、無償で食材を届けてくれています。畑の野菜だけではどうしても支援は賄いきれません。その分、個人や企業からの協力は非常に助けられていると言います。

 

【これからのフードバンク】

フードバンク農園は「フードバンク京都」の活動を知ってもらう、ボランティアの呼び水という役割も果たしています。畑作業をした人たちが配送を手伝ってくれるなど支援の輪が拡大しています。

また、食品を届けている人達に声をかけ、畑でピザ作りイベントや農作業イベントを開催しています。

 

図師さん

やっぱり笑顔を提供したいよね。思いは伝わると思ってやっているよ。ボランティアだけどプロだと思って作業しているかな。

▲笑顔で筆者の取材に応じてくださる図師さん

(6月29日 筆者撮影)

 

緊急支援だけでなく、イベントの開催など幅広い支援を行っている「フードバンク京都」のこれからの目標や目指す姿について、図師さんに教えていただきました。

 

困ったときはフードバンクに頼ればいいや、ではなくて1人じゃないんだって思ってほしいな。それでその時の思いを他の人を助けることに使ってくれればなと思う。

 

 

 

お忙しい中、取材にご協力いただき有難うございました。

「フードバンク京都」の各種SNSは下記からご覧いただけます。

 

【ホームページ】

https://www.foodbankkyoto.com/

 

【Instagram】

https://www.instagram.com/1fbkyoto/

 

【Facebook】

https://www.facebook.com/1foodbankkyoto/

 

 

参考記事

2022年3月28日付朝日新聞 「(きょうのすがた 2022知事選:2)子どもの貧困 食べることは出来るけど/京都府」https://xsearch.asahi.com/kiji/