旅と社会の救世主 フェリーの魅力とは【後編】

今回は私たちの生活を支えるフェリーの役割について考えます。前編でも述べたようにフェリーは「物流の2024年問題」の解消策の一つとして大きな役割を果たしています。

2024年の読売新聞の記事によると東京九州フェリー(北九州市)でのトラックの利用が増加して平日では8.9割が埋まり、積載台数がいっぱいで利用を断る日もあるそうです。乗船中は運転手の労働時間から除外でき、休息時間に計算されます。運転手にとっては、陸路の長距離移動と比較して体力面、安全面での環境が改善したとの声もあるようです。

難点はフェリーの運賃が陸路より数万円高いことですが、長い目で見ると走行距離の減少による車両やタイヤの寿命の伸びなど、結果的にフェリーの方がコストが抑制できるとのことです。

トラック運転手の残業規制が強化され、拘束時間や連続運転時間の規制も強化されました。それでは、天候不良でフェリーが欠航したり、陸路で渋滞したりした場合はどう扱われるのでしょうか。厚生労働省のトラック運転者の改善基準告示(2024年4月1日施行)によると

・『事故、故障、災害等、通常予期しない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を省くことができることとする。』

・勤務終了後は通常通りの休息期間(※)を与えるものとする。

※休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。

(具体的な事由)

ア 運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合

イ 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合

ウ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合

エ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運航が困難となった場合

 

そして、公益社団法人全日本トラック協会のトラック運転者の改善基準告示(2024年4月適用)は

フェリー欠航に伴い、急遽陸路等で移動する場合、陸路での移動時間がフェリー運航時間とおおむね同程度である等、経路変更が合理的であると認められるときは、当該移動時間は予期し得ない事象への対応時間に該当します。

と述べています。つまり、フェリー欠航により、陸路での移動に振り替わると、フェリーでの休息だったはずの時間が規制に適用されない労働時間になり、本来よりもかなり労働時間が増えることになります。欠航はできるだけ避ける必要があります。

フェリーは人や物だけを運ぶのではありません。旅行の時、ペットと遠距離移動するのは簡単ではありません。しかし、フェリーの中には、ペットをケージから出して一緒に過ごせる部屋を提供しているところもあるようです。例えば、商船三井さんふらわあでは『ウィズペットルーム』という部屋を提供しており、乗船下船ではペットケージを利用するものの、部屋ではケージからペットを出して、一緒に過ごすことができるのです。旅、引越しなど、『家族全員』の負担を減らし移動することができます。

このように物流、娯楽など私たちの生活を支えてくれているフェリーですが、物価、人件費、燃料費の高騰などで打撃を受けています。筆者が乗船した名門、大洋フェリーも20年程変えていなかった運賃を24年4月に1割程度値上げしています。さらに今年4月からは船内レストランのバイキングも値上げを実施。筆者がいつも楽しみにしている食事ですが、昨年乗船した時よりも高いと感じたのは間違いではなかったようです。

今日、私たちは人手不足、物価高など多くの課題に直面していますが、フェリーの存在が、私たちの選択の幅を広げてくれるかもしれません。時間や費用の面で諦めていた旅先、利用制限や身体的、精神的負担から一緒に連れて行けなかった旅のお供、物流の滞りで届けられなかった生活物資など、想像以上にフェリーは私たちに多くの「贈り物」を届けてくれているようです。

 

参考記事:

2024年5月14日付トラック運転手の労働規制強化、フェリー輸送が活況…給料減少で人材輸出に懸念も

https://www.yomiuri.co.jp/national/20240514-OYT1T50

2024年10月3日付 日本経済新聞電子版 トラック輸送、フェリー活用拡大 陸路から転換

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83844660S4A001C2QM8000/

 

参考資料:

フェリーさんふらわあ ペットと一緒に乗船 家族みんなでさんふらわあの船旅

https://www.ferry-sunflower.co.jp/lp/pet/

厚生労働省 トラック運転者の改善基準告示(2024年4月1日施行)

https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/001383159.pdf

国土交通省 公益社団法人全日本トラック協会 運転者の改善基準告示(2024年4月適用)

https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf