暑い夏!長い夏...

気がつけば7月も半ば。各地で梅雨明けが発表され、本格的な夏が幕を開けました。連日35度を超える猛暑日、天気予報の真っ赤な太陽マークを見るだけで憂鬱になってしまいます。開幕から3ヶ月が経った大阪関西万博は、来場者1000万人を超え大盛況となっていますが、この猛暑で存分に楽しめないのが悔しいところです。日傘の貸し出しなどさまざまな暑さ対策の情報は目にしますが、来場者からはさらなる対策を求める声もあるようです。

 

いろんな悩みが付きまとう夏であっても、学校に通う子どもたちにとっては、わくわく溢れる夏休みの季節です。花火大会、旅行にフェスにあれこれ予定を立てては、夏ならではの思い出を創っていくのでしょうか。筆者は暑さにやられ、自分はこの休みに結局何をしたのかと、1ヶ月を無駄にしたことを、後悔するのがいつものことですが...

 

過ごし方は多様ですが、学校がない開放感に非日常的なイベントが加わり、なんとも言えないきもちでいっぱいになります。しかし、親の立場になってみると、その状況は変わってくるようです。

筆者の母がよく言っていたのは、昼食の献立を考えるのが大変だということでした。自分一人だと適当でいいけど、子どもがいるときちんとしたものにしないといけないからだと言うことでした。母は当時専業主婦で、比較的時間に余裕がありましたが、それでも1ヶ月もの間学校がないことはかなり負担になっていたようです。共働き世帯が増えた近年では、昼食はどうする、日中は誰が面倒をみるんだといった深刻な問題となっています。せっかくの夏休みだから、何か特別な思い出を創ってあげたいという思いがあるゆえに、より難しい問題となっているのでしょう。

 

こういった子どもの体験づくりで注目される、「ラーケーション」制度について考え達と思います。そもそも「ラーケーション」とは、「Learning:学び」と「Vacation:休暇」を合わせた言葉で、校外での自主的な学びを支援する制度として始められました。内容としては、平日に子どもと保護者が校外で体験活動などに取り組むもので、「自主活動中」として年3回までは、欠席扱いにならないという特徴があります。学校ではできない体験を促すことを目的としています。具体的には、博物館に行き地域の歴史を学ぶといったものが挙げられるでしょう。愛知県などが先陣を切って2023年から運用を開始しました。

しかし、この制度が今後広く浸透すれば、既に大きな問題となっている「教育格差」、とりわけ「体験格差」を加速してしまう懸念があります。愛知県が発行しているリーフレットには、ラーケーションとなる条件を①保護者と行うこと②体験や探究の活動であることとしています。

これでは、有給取得を保証されている正社員で生活に比較的余裕のある家庭が前提聖子とされていると感じてしまいます。パートやアルバイトの親が有給を取得することは現実的とは言えません。休めばその分収入が減るわけですから、とくに一人親世帯が容易に実践できるとは思えません。また、事前に活動目的などを記すワークシートの作成が求められており、その作成時にも「保護者と一緒に」が前提とされています。

 

自主活動なのだから必ずやらなければならないものではない。やれる、やりたい家庭がすればいいじゃないか。そう考える方もいるでしょう。ですが、こういった活動を通じて得た学びや気づきが子どもたちの将来に大きな意味を持っていることは言うまでもありません。その体験に格差ができてしまっては、みな平等を目指す教育の意義が失われてしまうのではないでしょうか。

 

ネット社会と核家族の広がりは、地域社会の結びつきを弱めました。しかし、子どもたちの豊かな未来を願うならば、地域による積極的な支援こそ意味のある政策でしょう。7月13日付読売新聞朝刊で紹介されていたような、大学が主催する体験活動やワークショップの開催は、地域支援の一例でしょう。そういった活動が当たり前になれば、体験格差の解消の兆しは見えてくるはずです。

長い夏休みに、一人家に残された子どもたち、そして彼らの親たちにとって、悲しくつらい思い出にならないように、私たち学生そして、地域社会として支援の方法を検討する意義はあるのではないかと思いました。

 

参考記事

7月13日付 読売新聞 朝刊 (大阪13版)33面「探Qみらいファーム 生育調査「濃い緑に」

7月13日付 読売新聞 朝刊 (大阪13版)39面「海外気分・混雑・暑さ対策を」

 

参考資料

愛知県ホームページ https://www.pref.aichi.jp/soshiki/gimukyoiku/learcation.html