ジェンダーギャップ指数118位はそれほど悪くない? 男女平等に必要な多角的視点

「(日本のジェンダーギャップ指数は)148か国中118位だと言われると、『そこまでではなくね?』という疑心を抱いてしまう」

タレントでコラムニストの小原ブラスさんによる、読売新聞オンラインに掲載されたコラムから引用しました。

日本には、女性の政治家や民間企業管理職が少なく、賃金格差が存在するという紛れもない事実があります。女性として20年間生きてきて、男性であれば感じなかったかもしない理不尽な思いを味わったこともあります。そのような経験を否定されたように感じ、この一文にショックを受けました。しかし小原さんが伝えたかったことは、日本は男女平等であるなどという単純な言説ではありません。むしろ、男女平等を達成できていない現状を憂い、その背景にまで目を向けていたのです。

 

◾︎そもそも、ジェンダーギャップ指数とは

男女共同参画に関する国際的な指数は、内閣府のページに記載されているだけでも3つ存在します。ジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)とジェンダー開発指数(GDI)、ジェンダー不平等指数(GII)です。報道でよく耳にするのはジェンダーギャップ指数です。

世界経済フォーラム(World Economic Forum:WFE)が算出しているこの指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野14項目で測定されています。0~1の数値で表され、1に近いほど男女平等の社会であることを示しています。

今年6月12日に発表された最新データによると、日本の数値は前年と同じく「0.666」であり、148か国中の118位でした。1位のアイスランドの「0.926」と比較すると、いかに低いかがわかります。

 

◾︎なぜ、日本のジェンダーギャップ指数は低いのか

日本の指数は、なぜここまで低いのでしょうか。全4分野の数値をみると、理由は明確です。識字率や各教育の男女比から測定した「教育」と、健康寿命や出生児の男女比を基にする「健康」は、ほぼ1に近い数値となっています。労働参加率や勤労所得の男女比から測定した「経済」は「0.613」であり、低いように見えますが、平均をやや上回っています。

ところが、国会議員や閣僚の男女比から測定した「政治」は「0.085」です。女性議員は衆議院で15.7%(2024年11月)、参議院で25.4%(同)と、半数には遠く及びません。自民党の国会議員にいたっては、女性比率が1割強に過ぎません。第2次石破内閣の女性閣僚は、2人にとどまっています。日本のジェンダーギャップ指数が低い理由は、女性の政治参画が他国と比較して圧倒的に低いことなのです。

 

◾︎ジェンダーギャップ指数からわかること

ジェンダーギャップ指数から読み解けるのは、日本は「経済」「教育」「健康」面では他国と同等かそれ以上に男女格差を是正できているにも関わらず、政治面における女性参画が圧倒的に遅れているという事実のみです。ジェンダーギャップ指数のランキングが出るたびに、日本は男女不平等だと報道されますが、その数値が示す事実にまで踏み込んで考えていたでしょうか。

これによる問題とはなんでしょう。小原さんはコラムにおいて、偏った数値1つだけを振りかざすことで『女性の声』の信憑性が損なわれ、必要な措置さえも蔑ろにされる可能性がある、と述べています。

 

◾︎完全な男女平等社会に向けてできることとは

日本における「男女格差」は、家制度の名残や地域格差と絡んでいます。世界経済フォーラムが測定しない、日本特有の問題にも目を向けなければなりません。しかし、男女格差を裏付ける情報として使用されるのは、世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数ばかりです。

完全な男女平等を達成するためには、現状の正確な把握が欠かせません。国の政策や企業の経営姿勢などを変えるためにも、より多角的な視点からの論議が必要です。

 

参考記事:

・7月3日付 読売新聞オンライン 「ジェンダーギャップ指数『男女平等』日本118位なんて『そこまでではなくね?』」https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20250703-OYT8T50007/

・朝日新聞オンライン 「男女平等、日本は前年と同じ118位 G7で最下位 政治分野で後退」 https://digital.asahi.com/articles/AST6C7GZNT6CUHBI03FM.html

・朝日新聞オンライン 「『女性活躍』掲げた石破内閣、女性閣僚2人 専門家『驚きはない』」 https://digital.asahi.com/articles/ASSB13R7ZSB1UTIL023M.html

 

参考資料:

・内閣府男女共同参画局 「男女共同参画に関する国際的な指数」https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html

・世界経済フォーラム 「ジェンダーギャップ報告書2025」 https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2025/

(最終閲覧は、すべて2025年7月6日)

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