今月1日、2026年春に卒業予定の大学4年生や大学院修士課程2年生を対象とした採用選考活動が解禁されました。オフィス街周辺ではリクルートスーツに身を包んだ若者の姿をよく見かけます。
ただ、少子化によって人手不足が深刻化するなかで企業の採用意欲は高く、優秀な人材を囲い込むために実質的な選考活動は年々早期化しています。
◯形骸化する採用ルール
就職活動が学業に及ぼす影響を抑えるため、政府は就活日程に関するルールを定め、経済団体などに対して順守を要請しています。
現行のルールでは、卒業・修了前年度の3月1日に広報活動を開始し、卒業・修了年度に入った6月1日に採用選考活動が始まることになっています。
しかし、優秀な人材を確保するため、多くの企業が採用選考の大幅な前倒しを行なっています。
政府の採用ルールに罰則などの強制力はなく、早期化に歯止めがかからないのが実情です。
◯早期化と長期化
選考の早期化は就活の長期化をもたらします。
近年は卒業前年度の秋から冬ごろに内々定が出るケースも珍しくありません。筆者も最初に内々定が出たのは大学3年の10月頃でした。
ただ、早期に内定を獲得した後も活動を続ける学生は多く、第一志望の企業が採用ルールを守って6月に面接を開始する場合ならば、学生によっては半年以上にわたって選考活動を継続することになります。
また、近年は業務体験やグループワークを通じて企業理解を深めるインターンシップの重要性が増していますが、そのことも長期化の一因となっています。
インターンシップは卒業前年度の夏休みに行われることが多いですが、その選考は5〜6月ごろに開始されます。そのため、面接やグループディスカッションの対策を春から始めておく必要があり、卒業前年という大切な時期の大半を就活に費やすことになります。
◯学業への影響は?
就活の長期化は学業に悪影響を与える恐れがあります。
就活のワークショップで情報交換をしていると、大学卒業前の2〜3月ごろからインターンシップ対策を始め、大学院では研究と就活を並行して進めているという修士課程の学生の話をしばしば耳にしました。選考解禁の6月まで活動を続けていたとすると、修士課程在籍期間の半分以上を就活と研究の両立に費やすことになります。
本来、学業に励むはずの時間が削られているとしたら、社会にとっても大きな損失となってしまいます。
採用活動は、企業にとって今後の成長を左右する重要な取り組みです。優秀な人材を確保することが死活問題であることは理解できます。ただ、「青田買い」のためになし崩しで選考時期が早まる事態には問題があるでしょう。学生が学業に励む機会を奪われることがないように、現在の採用活動を根本から見直す必要があるのではないでしょうか。
参考記事:
6月2日付 読売新聞夕刊1面「大卒 すでに8割内定か 選考解禁 売り手市場顕著」