走って見つけた、東京の「自転車にやさしい」道

通勤や通学、買い物など、日常生活における移動手段として自転車を利用する人は少なくありません。筆者も高校生の頃は通学に使っており、また日頃の移動にも重宝していました。上京後は、都内での短距離移動の際にシェアサイクルを活用しています。

しかし、実際に都内の車道を走行してみると、危険を感じる場面が多々あります。たとえ歩道寄りに自転車レーン(自転車専用通行帯)が設けられていても、その進路が路上駐車の車両に妨げられていることが少なくありません。また駐車禁止の標示がある場所にも、当然のように路肩に車が停められている光景をしばしば目にします。

その結果、自転車は進路を変更せざるを得ません。筆者はそうした場面では、自転車を降りて歩道を押して進むか、後方の安全を十分に確認したうえで停まっている車の右側を通過するようにしています。しかし、時速50〜60キロで疾走する自動車の脇を走行することは大きな危険を伴います。

実際にこのような状況で事故が発生した事例もあります。NHKの記事によると、2019年には、渋谷区の自転車レーン上に停車していたトラックを避けようと進路を変更した自転車が、後方からきた別のトラックのサイドミラーと接触するという事故がありました。

では、自転車と自動車がそれぞれ快適かつ安全に道路を通行できるようにするには、どのような対策が必要なのでしょうか。

筆者は先日、シェアサイクルで墨田区・押上へ向かった際、自転車が走りやすい環境づくりをいくつか目にしました。今回は、文京区の白山通りと台東区の浅草通りでの実例を紹介します。

 

白山通り(文京区)

豊島区・文京区・千代田区を結ぶ白山通り(都道301号・国道17号)のうち、都営三田線千石駅から春日駅にかけての区間では、車道の左端(歩道側)に青く塗装された自転車レーンが整備され、その右隣には自動車の駐車枠が一定の間隔で設けられています。駐車枠を自転車レーンの車道側に設置し、自転車と自動車の通行空間を分けることで、交通量の多い幹線道路でありながらも安全性が確保されています。

 

自転車レーンの車道側に設置された自動車の駐車枠 (5月25日筆者撮影、画像を一部加工しています)

インターネットで調べてみたところ、白山通りの一部ではもともと車道の左端にパーキングチケット方式の駐車枠が設置されていましたが、都が2019年度までに駐車枠を車道の内側へ移設し、歩道と駐車枠の間に自転車レーンを新設したとのことです。これにより、自転車は駐車車両を避けて走る必要がなくなり、進路変更による事故のリスクが軽減されました。

一方で、注意すべき点もあります。駐車している車のドアが突然開いて接触するおそれがあるほか、車から降りた人が自転車レーンを横切って歩道に向かう際に衝突する危険性も考えられます。このように、自転車と人や車両との接触事故のリスクは依然として存在しています。それでも、以前のように駐車車両のすぐ脇を走行せざるを得なかった状況に比べると大きく改善されたといえるでしょう。

 

浅草通り(台東区)

もう一つ注目したのが、観光地としても知られる浅草エリアを通る浅草通り(都道463号線)です。上野駅前交差点から隅田川にかかる駒形橋の手前までの区間では、歩道の中に「歩行者通行部分」と「自転車通行部分」が明確に分けられています。歩道の中央には分離帯が設けられ、さらに車道側には柵があるため、自転車が車や歩行者と接触する危険が軽減されています。

歩行者と自転車の通行部分が分けられた歩道 (5月25日筆者撮影、画像を一部加工しています)

観光客も多く行き交う地域でもあり、こうした歩道の整備は自転車と歩行者の双方にとって安全で快適な環境を提供するものであると感じます。ただし、自転車通行部分に放置自転車が置かれている箇所も見受けられました。利用者がルールやマナーを守らなければ、本来の効果を十分に発揮することはできません。インフラ整備と同時に、利用者の意識の向上も必要であると考えます。

自転車通行部分に放置されている自転車 (5月25日筆者撮影)

交通量の多い都心部で自転車を利用していると、自動車や歩行者との接触など、さまざまな不安に直面します。そうした中で、白山通りや浅草通りのように自転車の安全な通行を支える取り組みが広がっていることは、都市交通の今後にとって非常に意義深い動きであるといえます。

また筆者は今年に入ってから自動車免許を取得しましたが、実際にハンドルを握ると、自転車が車道のすぐ横を走っていることに予想以上の緊張感を覚えました。急な進路変更や車道の内側を走ろうとするなど自転車の不規則な動きは、ドライバーにとって大きな脅威です。自動車を運転する側から見ても、自転車と自動車、そして歩行者の通行区分を明確に分ける道路整備は、それぞれの安全を確保するために欠かせません。

今後、こうした取り組みが都内全域や全国に広がり、誰もが安心して移動できる都市づくりが進んでいくことを期待しています。

 

参考記事:

2020年9月6日付 日経電子版 「最新の自転車専用レーン 走って安全性を確かめた」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63399810T00C20A9W11300/

 

参考資料:

警視庁「自転車の交通ルール

NHK「WEB特集 『自転車は車道』と言われても…

乗りものニュース「路駐のクルマ気にせずスイスイ 「日本一快適」な新タイプ自転車レーン 今後増える?

東京都建設局「東京都の自転車通行空間整備