1955年5月25日に岩波書店から広辞苑の初版が刊行され、2025年で70年を迎えます。18年に刊行された第7版では約25万語が収録され、現在は電子版という形態でも提供されています。
電子辞書の出荷台数は03年から右肩上がりで伸び、ピークの07年には約280万台が出荷されました。しかし、翌年から一転して低下し続けます。17年から19年にかけてわずかに増加したものの23年では38万台ほどに落ち込んでいます。
25年2月には80%以上の国内シェアを持つカシオ計算機が新機種の開発の中止を発表しました。和英・英和辞典機能と計算機能が搭載されたカシオ初の電子辞書「TR-2000」は1981年に発売されました。長い歴史を誇り2004年から国内シェアの首位を走った企業の発表に驚きが隠せません。
電子辞書やモバイル端末などで使用するためのデジタル辞書の個人ダウンロード数も減少傾向にあります。これには全国の学校でPCやタブレット端末の普及が進んだことが影響していると考えられます。18年頃からは徐々に教育機関向けのライセンス販売数が上昇しており、20年から21年にかけて使用者数が10万人も増加していることからもうかがえます。
こうしたなかでデジタル版ではなく紙の辞書を使うメリットを考えてみました。まず、探している単語の意味だけでなく使用例、用法を一度に確認できることです。さらに、調べたい単語以外の言葉の意味も目に飛び込んでくることから新しい言葉と出会うきっかけの場になると思います。紙ならではの活用法としてマーカーや書き込みができるところなども利点ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
まず持ち運びの手間が挙げられます。実際に手にとれば電子辞書やモバイル端末などとの差は歴然です。他にも、紙媒体の辞書を使い慣れていないと検索に時間を要してしまうことがあります。筆者が小学校低学年時には国語辞典で言葉を調べる練習をする授業がありました。
持ち運びに便利で即座に言葉の意味を調べられるデジタル辞書が選ばれる理由は分かっています。しかし、紙には捨てがたい魅力があります。デジタル版だけでなく自宅では紙の辞書の使用を心がけたいと思っています。
参考文献:
朝日新聞デジタル 2025年2月14日付 カシオが電子辞書の新規開発を中止 学校でのPCやタブレット普及で
https://www.asahi.com/articles/AST2G3HN0T2GULFA027M.html
日経電子版 2025年2月14日付 カシオ、電子辞書の開発中止 4~12月期の純利益57%減
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG113C60R10C25A2000000/
読売新聞オンライン 2025年2月14日付 カシオ、電子辞書の新モデル開発を中止…スマホの普及で需要減
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250214-OYT1T50155/
参考資料:
日本電子出版協会 デジタル辞書の年度別販売実績推移
https://www.jepa.or.jp/jepa_cms/wp-content/uploads/2024/10/JEPAref_app2024.pdf
ビジネス機械・情報システム産業協会 電子辞書出荷実績推移(1996-2023年)
https://mobile.jbmia.or.jp/market/densi-jisyo-1996-2023.pdf