日本的雇用システムの最大の特徴であるとされてきた終身雇用制。企業は新規学卒者を一括で採用し、深刻な経営難などの特別な事情がない限り定年まで雇用を保障するのが一般的でした。
ただ、昨今は黒字であってもリストラを行うケースが相次ぐなど、従来の慣行が少しずつ変化していると感じさせるニュースも見られます。
◯相次ぐ大規模なリストラ
日産自動車は13日、全世界で約2万人の従業員を削減すると発表しました。同社は25年3月期の連結決算で最終損益が6708億円の赤字となっており、経営の立て直しが急務となっています。
自動車業界では、マツダも先月500人の早期希望退職を募集すると明らかにしています。
国内市場の縮小やトランプ関税といった先行きの不透明さが雇用にも影響を与えています。
◯黒字企業もリストラ
これまでリストラは経営難での例外的なものであるという理解が一般的でした。しかし、近年は黒字でもリストラが実施されるケースが目立っています。
今月9日、パナソニックホールディングスは国内外で5000人ずつ人員を削減すると発表しました。同社の25年3月期の連結決算は純利益が3662億円の黒字となっています。ただ、ゲームや音楽などのコンテンツ事業の強化で復活したソニーグループや事業ポートフォリオの入れ替えに成功した日立製作所などのライバルと比較すると収益力に課題があり、人員削減という痛みを伴う改革に踏み切った形となります。
今後、こうした黒字リストラが増えてくると、終身雇用制は確実に終焉に向かっていると見ることができるでしょう。経営陣は株主からの収益の最大化を求める声と従業員からの雇用の維持を求める声という2つの圧力の間で難しい判断を迫られることになりそうです。
◯備えは?
終身雇用制が崩れつつある中、社外でも通用するスキルを身につけることはこれまで以上に重要になっていると言えるでしょう。
同じ会社で勤め続ける場合、社内でそつなく仕事をこなしていれば生き残ることができていたかもしれません。
しかし、雇用が流動的になりつつある今、社外でも生きる技能を全く身につけていないということは大きなリスクとなりかねません。最悪の場合、職にありつけなくなってしまうこともあるでしょう。
同じ会社で勤め上げる場合もスキルの習得は有用でしょう。他社からも求められるような優秀な社員であれば、会社への貢献度はより大きく、責任あるポジションを任せられる可能性も高まるはずです。
日本的雇用システムが変容しつつある中、何かに依存することで安定を得ようとするのではなく、自らの力で安定を勝ち取る姿勢が求められるようになっています。筆者も来年からは社会人になりますが、日々学び続ける姿勢を大切にしたいと思います。
参考記事:
日経電子版「黒字でもリストラ、早期退職募集25年は9割増 パナソニックが押し上げ」(2025年5月16日)
日経電子版「日産、世界で7工場を統廃合 従業員2万人削減」(2025年5月13日)
日経電子版「パナソニックHD、1万人削減 構造改革費用1300億円」(2025年5月9日)
日経電子版「マツダ、500人の希望退職者を募集 自動車業界の先行き不透明で」(2025年4月22日)
参考文献:
水町勇一郎『労働法〔第10版〕』(有斐閣、2024年)