【分析】東京ヤクルトスワローズはなぜ弱いのか

 

筆者は東京ヤクルトスワローズのファンである。

塩見泰隆選手のサイン入りタオル

 

 

プロ野球が開幕してから1ヶ月あまり経過した。徐々に上位チームと下位チームの差が出てきている。そんな中、目を疑うような情報が飛び込んできた。セ・リーグ最下位のヤクルトスワローズが、4月終了時点であの96敗した2017年よりも データ的に劣っているというのだ。(※1)今年、ヤクルトは12球団で最も10勝到達が遅かった。3年前には連覇を成し遂げ、うち1度は日本一にもなった球団が、どうして最下位をひた走るような状態になってしまったのか。まだシーズン序盤ではあるが、考察していきたい。

 

チーム体制:怪我人が多い

3月27日の朝日新聞には、ヤクルトについてこんな指摘がある。「故障者対策をはじめ、チーム体制に問題があるとしか思えない」。今年もすでに主砲村上や、リードオフマン塩見、正遊撃手長岡と打線の核とも言える選手を早々に失った。この他にも左腕高橋、勝ちパターンの荘司、外野手丸山が離脱している。

こうした主力の欠場は今に始まったことではなく、毎年のように発生している。トレーナーに問題があるのか、起用法に問題があるのか、あるいは他に原因があるのかは定かではないが、いずれにしても中心選手が続々と離脱しているようでは、とてもじゃないが上位で戦うのは厳しい。

編成:投手に著しく偏った結果、野手が疎かに

 よく、ヤクルトは投手力が課題と言われる。本拠地とする神宮球場は12球団で最もホームランが出やすいとされ、投手の成績は他チームと比べて見劣りしがちだ。そのためか、近年はドラフトで投手に偏重した指名をしている。実際、2018年から直近の2024年まで、7年連続で投手を1位で指名している。

この結果、野手の補強は後手に回った。前述の7年で主力野手となった選手は長岡秀樹(2019ドラフト5位)のみ。他のほとんどが十分にアピールできていないという状態が続く。スカウトの手腕に疑問が呈される。この結果、一部の突出した選手がチームを担うこととなり、そうした選手が早々に離脱した今シーズンは低空飛行が続く。連覇した2021〜2022の主力野手と、今年の顔触れがほとんど入れ替わってないことが何よりの証左だ。

 

環境:慣れが生じているのではないか

 監督を務める高津臣吾は2020年に起用され、今シーズンは6年目となる。この6年という数字は、現役監督で最長である。そこに、慣れが生じているのではないか。最近読んだNumberWebというサイトの記事に、慣れの怖さを語る元ヤクルトの真中氏のインタビューがあったのでそれを引用する。

「1、2年目って選手は監督の言葉に常に聞き耳を立てているんです。新しい監督はどんな考え方をするのか、その意向を敏感に察知してアピールしようとする。でも3年目にもなると、選手は意識が鈍くなるし、逆に監督にも慣れが出てあえて言葉にしなくなるようなことも出てくるんです。“慣れ”は本当に難しい」(※2)

昨年末、低迷を理由にチームを去ったオリックスの中嶋監督も慣れや驕りを理由にあげていた。6年という長期政権の中で惰性が生まれてしまったのだろう。そろそろ新しい風を入れてみてはいかがか。

采配:本当にデータを見ているのか疑わしい

采配の面にも疑問符がつく。例えば、5月7日の広島戦だ。ヤクルトはここまで、1試合あたりの救援投手が投げるイニング数が12球団で1番多い。つまりは、先発投手が長く持たず、救援に負担のしわ寄せが集中しているということだ。そんな中で、先発の山野投手を僅か4回77球で降ろしてしまう。

また、同日には左打者が続く場面で左打者に弱い山本投手(被打率 対左.333 対右.067)を投入。ピンチを招いたところで広島側が切ってきた右の堂林に対して、今度は右打者に弱い小澤投手(被打率 対左.182 対右.333)を投入した。

攻撃が保守的なところも気になる。リードの展開でバントを繰り返し、相手にアウトを与えるようなことが本当に最適解なのだろうか。得点差を広げたい気持ちはわかるが、一般にバントはほとんどのケースで得点確率が下がるとされている。(※3)つまり、相手を利しているだけである。

こうしたデータに背を向けたような采配には疑問符がつく。更に、ベテランを過剰に優遇するあまり、若手にチャンスが巡ってこないことも、世代交代が進まない一員だろう。山田選手や中村選手は今シーズン打率1割台と、極度の不調に陥っているが、2軍再調整などの措置は取られていない。出番がなくなった若手は経験を積めず、それが巡って下からの突き上げという形の競争がなくなってしまう負のループに突入しているのだ。この悪循環を抜け出さない限り、優勝は遠のくばかりだろう。

未来へ

主砲村上の渡米が間近と目される中、今後は長期を見据えた再建計画が必要だ。そのためには若手を積極的に起用することはもちろん、上層部を含めた大規模な刷新も視野に入れるべきだろう。現状のままでは、世代交代が上手くいかず、今以上の悲惨なチーム状況が待ち受ける。危機感をもって、チーム再建に取り組むことを求める。

また優勝みたいな…

(=一部敬称略)

 

参考資料

3月27日 朝刊朝日新聞 スポーツ面 (2025プロ野球戦力診断:5)ヤクルト・オリックス

3月28日〜 各紙朝刊 スポーツ面 プロ野球

(※1)野球研究所 Xより

https://x.com/SABR_lions/status/1917974927065616837?t=6awBa4WiEhWSSAOlRdGXnA&s=19

(※2)NumberWeb 「1位のほうがおかしいんですよ(笑)」優勝→“96敗”のどん底で元ヤクルト監督・真中満が「嵐の曲を聴いていたら涙が」…天国と地獄の監督人生 https://number.bunshun.jp/articles/-/865669

(※3)野手送りバントの損得を統計的手法で検証してみた つばめnote

https://note.com/tsubapen/n/na84e2f35a450