みなさんは占いに代表されるような「スピリチュアル」と呼ばれるものを信じますか?スピリチュアリティ―やスピリチュアルという言葉を聞くと、どこか怪しげで近づかない方が良いという印象を抱く人もいるかもしれません。筆者も以前は、興味はあるが距離を置いていく方が良いものだと思っていました。
春から新学期が始まり、履修登録をする際ヨーガ(ヨガ)のクラスを受けることにしました。SNSや街中でヨーガ教室を目にすることがよくあり、いつか体験してみたいと思っていたのです。30人のクラスということもあり緊張していたのですが、今では大学で週に1回ヨーガを受けられることを楽しみにしています。
95分の授業は前半約30分が座学、後半約1時間は実践と分けられています。座学ではコメントペーパーで寄せられた受講生の感想や質問に先生が答えたり、ヨーガの起源について毎回少しずつ学んだりしています。その後の実践の内容は週によって内容は異なるのですが、ヨーガのポーズをとり、身体を伸ばしたり呼吸を整えたりします。最初は難しそうに思っていたのですが、見様見真似でやってみるうちに日ごろ凝り固まった部位を伸ばし、全身に血が巡っていくのを感じるようになりました。
また、普段は気にしていない呼吸に意識を向けることで、頭の中や心が軽くなっていくようにも思えます。インターネットの普及により情報がすぐに得られるようになった社会では、常に何かを考え気が休まらないこともあります。ヨーガのように、身体を通じて自分自身と向き合う時間はなかなか取れていないのではないでしょうか。
先生は実践でポーズをとる時、「自分ができると思った範囲でやってみてください。人と比べる必要はありません」と言っています。身体の硬さによって自分には難しいなと感じるポーズもあるのですが、人と比べる必要はないという先生の言葉によって、できる範囲で無理なくやれば良いのだと思えます。
そしてこれは日常生活の中でも活きてくる思考法です。何かと人と比べてしまうことが多かったのですが、自分にできる範囲のことはなんだろうか、自分の内面に意識を向けて考えるようになりました。
では、冒頭で挙げたスピリチュアリティーとヨーガはどのようにつながっているのでしょうか。スピリチュアリティーとは「宗教性・霊性」と訳され、宗教とまでは言えない幅広い行為を含む概念です。誰しもが悩みを抱えて生きている中で、占いやおまじないにすがったり、パワースポットに行って癒されたくなったりすることもあります。宗教学ではこうした多種多様な営みをスピリチュアリティーと呼びます。近年注目されている聖地巡礼や推し活、そしてヨーガもスピリチュアリティーに含まれることになるのです。
幅広い物事が含まれますが、適度な距離をとることも必要です。オウム真理教による地下鉄サリン事件から今年で30年。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散命令が出るなど新興宗教への警戒心がある一方、スピリチュアルなものへの関心は根強く残っています。スピリチュアリティーを道具とする詐欺やカルトなどに知らず知らずのうちにのめり込み、生活に支障をきたしてしまう事例もあるのです。報道でも、依存や服従を強いる相手には警戒が必要と警告しています。
自分の力ではどうしようもないと思えることに直面したとき、何かに頼ってしまう気持ちもわかります。しかし、ヨーガを通じてスピリチュアルな営みとは、自己と向き合うきっかけを作ることであり、自分の足で人生を歩んでいくための手がかりなのだと気づけました。
ゴールデンウィークもまもなく終わります。「五月病」という言葉があるように、この連休が明けて会社や学校など日常生活に戻るのが苦しくなる人も多く、心の調子を崩しやすい時期です。深呼吸をするだけでも気持ちが落ち着くとも言われています。心の声に耳を傾けながら日々を乗り切ってみませんか。
参考資料
朝日新聞デジタル 「(こころのはなし)スピリチュアリティーに求めることは 宗教社会学者・弓山達也さん」https://digital.asahi.com/articles/DA3S16185714.html?_requesturl=articles%2FDA3S16185714.html&pn=2
朝日新聞デジタル 「大型連休明けの不登校、なぜ多い? 専門家が説く『心の疲れ』対処法」https://digital.asahi.com/articles/AST513GTGT51UOHB001M.html?iref=pc_ss_date_article