「物流2024年問題」に直面した引っ越しピーク 現場の様子は?

トラックドライバーの時間外労働時間の規制で労働力不足が懸念される物流2024年問題に直面してから、この4月で1年が経ちました。「2024年」の影響を直接受けた初めての転居シーズンも、ようやく峠を越えました:。

例年、引っ越しの需要は3月15日から4月6日にピークを迎えます。今年2月、中野洋昌国交相は閣議後会見で、「引っ越し時期の分散に向けて検討、協力をおねがいします」と異例の呼びかけをしていました。

引越業者の現場作業員は、アルバイトが少なくありません。求人サイト「バイトル」を運営するディップによると、ドライバーなど引っ越しアルバイトの25年1月の全国の求人件数は新型コロナウイルス流行前の19年同月に比べると2.6倍に増加しました。

またスポットワーカーの利用も増えており、単発アルバイトの仲介アプリを手掛けるタイミーによると、25年2月の引っ越しスタッフの募集人数は前年同月から4割増えました。

「現場を知りたい」。4月中旬、筆者はスポットワークの引越バイトに挑戦しました。求人の多くは「男性限定」ですが、運よく「女性スタッフも大活躍中」と書かれた募集を見つけることができました。勤務先は大手引越し業者。時間は朝8時から夕方6時まで、時給は1300円でした。

当日はまず事務所に向かいました。市街地にあるアパートの一室で契約を結んだあと、住所が書かれた用紙と制服を渡され、電車で移動するよう指示されました。

到着するとすでに引越しは始まっていました。

3、4人のアルバイトとリレー方式で部屋に荷物を運び入れました。驚いたことに、現場で指揮を執っていたのは高校生3年生の男性でした。1年ほど前から毎週末シフトに入っているそうです。「仕事が楽しい。いろんな人に出会えて、社会勉強にもなる。就職活動にも役立つ」といいます。1時間ほどで引越しは完了し、次の現場に向かいました。

次の現場を仕切っていたのはもうすぐ勤続30年を迎えるという正社員の男性。16歳から働いているというその方に、「仕事を辞めたくなったことはないか」と伺うと、「ない。運ぶ荷物は毎回違う。同じ仕事はない」と話してくれました。そうはいっても肉体労働、しんどくはないのかと聞くと、「一人で作業するわけではない。自分も動きつつ、暇する人が出ないように指示を出せば早く終わる」と微笑みかけてくれました。

「プロフェッショナルだ」。率直にそう思いました。

周りには「力仕事できついから、引越バイトだけは絶対にやらない」と話す友人も多く、依然として引越業者の人手不足は深刻です。

けれども、現場にはたしかに真摯に仕事に向き合い、誇りをもって誠実に働いているひとがいる。問題ばかりに目を向けてしまいますが、まずはひとりひとりの声に耳を傾けなければならないと、改めて感じました 。

役に立てるだろうか。罵声を浴びたらどうしよう。出勤前に抱えていた不安は大きく覆されました。社員の方にもアルバイトの方にも恵まれ、気持ちの良い汗をかくことができました。仕事終わり、給与を受け取るため事務所に立ち寄ると、「また働かないか」と声がかかりました。その場でアルバイトの契約を結び、オフィスを後にしました。

参考記事
3月14日付朝日新聞デジタル「春の引っ越し、大混雑 希望日通り難しく、国交相『分散を」
3月21日付日経電子版「引っ越し人材確保、サカイは手当増額 24年問題が直撃