祖父母とふと立ち寄った飲食店、お昼時で大勢の人が並んでいました。列に並んでいると、お店の方に手渡されたのはQRコードが印字された紙。QRコードを読み取って注文する方式で、スマートフォンを持っていない祖父母は『(筆者が)おらんかったら大変やったね』と苦笑いを浮かべていました。
最近では飲食店、商業施設、交通機関を含め身の回りの多くの場所でキャッシュレス化が進んでいます。筆者が野球観戦のためによく足を運ぶ東京ドームでは支払い方法がキャッシュレスで一元化されています。現金の受け渡しが無く、支払いの簡易化、効率化というメリットがある一方でバーコード決済のチャージ不足で冷や汗をかいた経験もあります。
デジタル化は現代の課題を解決してくれる手段と受け止められています。例えば、少子高齢化によるバス運転手の人手不足では、アプリを利用したライドシェアや乗り合いタクシーが解決策として挙げられます。多くの人を乗せることができるルートをAIが考えることで効率性が高まるというのです。
しかし、ガラケーだけ、あるいは携帯を持ってない高齢者もおり、配車アプリが利用できないという問題点は無視できません。スマホを使いこなしている人もいますが、私の祖母はよく電話でタクシーの配車を頼んでいます。電話、インターネット双方で予約、利用できる方がより多くに利用してもらううえでは効果的ではないでしょうか。
山口県田布施町では「のりーね」と呼ばれる乗り合いタクシーが導入されています。スーパーに足を運んでみると「のりーね」の乗り場が設置されていました。高齢者の方に限らず妊婦の方など幅広い利用を目的とするのなら、スーパーなど日常的に使用頻度の高い場所でサービスを周知させることも重要だと感じました。
日本では急速にデジタル化が進んでいますが、世界に目を広げると意外な動きが見られます。教育、福祉先進国のスウェーデンやフィンランドでは教科書の脱デジタル化が進んでいます。具体的には、フィンランドのリーヒマキ市で中学生と保護者、教職員に向けてアンケートを行ったところ、紙の教科書を望む保護者が7割、外国語などの授業で紙を使いたいと述べた教員が8割だったそうです。今年の秋からは既に紙の教科書に戻されている英語を含む外国語と数学の授業に加えて物理や化学の授業でも紙を復活させるようです。もちろん、分野によってデジタル化と相性の良し悪しは異なります。しかし、日本よりも随分先にデジタル化を進めた諸外国の例も踏まえて、もう一度、長い目でデジタル化の利点、欠点を見直しすこともデジタルを最大限に活用し、生活をよりよくするために大切だと感じます。
一元化における選択肢の極端な排除や、デジタル化は全員の利便性につながるという思い込みにとらわれない、柔軟な発想こそ重要ではないでしょうか。
参考記事:
- 2月12日付 読売新聞オンライン 「 AIが予約状況から最適ルート割り出す乗り合いタクシー、山口県田布施町で実証運行…月3500円の定額制」
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20250212-OYTNT50040/
- 1月16日付 読売新聞オンライン 「 デジタル教科書への全面移行、多くの校長は『強い懸念』…海外では『脱デジタル』へ転換も」
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20250116-OYT1T50016/
- 3月18日付 読売新聞オンライン「デジタル導入の『教育先進国』で成績低下や心身の不調が顕在化…フィンランド、紙の教科書復活『歓迎』」
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20250317-OYT1T50203/
参考資料:
- 三井不動産|東京ドーム過去最大規模のリニューアルとDXを実施(最終閲覧: 2025年4月13日)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2021/1213/download/20211213.pdf