佐賀県玄海町にある九州電力玄海原子力発電所に足を運びました。玄海エネルギーパークや原子力訓練センターが併設されており、原子力発電の仕組みなどを学ぶことができます。
原子力発電は天然ウランの核分裂反応を利用し、発生した熱で水を蒸気に変えタービンを回して発電をしています。この燃料であるウランには核分裂をしやすいウラン235が約0.7%、核分裂をしにくいウラン238が約99.3%含まれています。ウラン235は中性子があたると核分裂を起こし、その際に熱や中性子が発生します。分裂した中性子がさらに別のウラン235を核分裂させることで連鎖反応が起こり、発電に利用されるエネルギーを得ることができます。
原子炉は大きく沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)の2種類に分類され、玄海原発ではPWRが採用されています。炉心を通る水が格納容器内を循環し、放射性物質を含まない2次冷却水と呼ばれる水が蒸気となりタービンを回す点が特徴です。
原子力発電では使用済核燃料の問題があります。そこに残るウランやプルトニウムは再処理工場で取り出され再使用できます。しかし、再利用ができない核分裂成分を含む廃液も排出されます。この廃棄物は溶かしたガラスと混ぜ合わせガラス固化体にします。高レベル放射性廃棄物と呼ばれて表面温度が高く、冷却だけでも30年から50年かかります。その後、廃棄物は平成12年に施行された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」によって地表から300m以上深い場所に埋められる地層処分されることが定められ、最終処分場の検討が進められています。
玄海エネルギーパークには高さ13mにも及ぶ原子炉の実物大の模型などが展示されており、原子炉の出力を調整する制御棒を手で触れることができます。また、原子力訓練センターでは運転訓練を行うシュミュレータ室を見学できます。補修訓練を行う施設もあり、実物大の燃料取り扱い設備などの大きさに圧倒されました。
原子力規制委員会によると2025年3月現在、日本では7発電所で11基の原子力発電所が運転しています。一方、廃止された原子炉が6基、廃止措置中の原子炉が20基あります。日本のエネルギー自給率が約1割にとどまっている中で今後どのような政策を行っていくべきか。引き続き注目していきます。
参考文献:
2025年3月31日付 日経電子版 九州電力の玄海4号機、高燃焼度燃料導入を28年度に変更
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC289VD0Y5A320C2000000/
2025年4月8日付 読売新聞オンライン 佐賀県玄海町に「核のゴミ」最終処分場に関する住民説明の拠点が関所…NUMO理事長「質問に真摯に答えたい」
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20250408-OYTNT50101/
2025年4月9日付 朝日新聞デジタル NUMO玄海交流センター開設、文献調査へ理解深める拠点
https://www.asahi.com/articles/AST484RX3T48TTHB001M.html
2025年4月12日付 朝日新聞デジタル 原子力規制委、廃棄物埋設予定地を現地調査 廃炉作業中の東海原発で
https://www.asahi.com/articles/AST4C4J6LT4CUJHB00KM.html
参考資料:
経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/
原子力規制委員会
一般財団法人日本原子力文化財団
九州電力 玄海エネルギーパーク
https://www.kyuden.co.jp/company/school/pavilion/enepark.html
九州電力 玄海原子力発電所
https://www.kyuden.co.jp/business_outline/power/nuclear-power/genkai.html