新聞やテレビ、SNSを眺めていて、読み方が難しい言葉や人の名前に出会い、インターネットで検索することが最近増えています。特に人名は、アルバイトで多くの人と接することもあり、「この人の名前はどう読めばいいのだろう?」「どういう発音で読むのが、正解なんだろう?」と迷うだけでなく、実際に間違えたこともあります。同じような悩みを抱えている人は少なくないことでしょう。
近い未来、こうした悩みがさらに深刻になる可能性がありそうです。近年、子どもに珍しい名前をつける親も増えています。例えば、①「兜人」②「深肇」③「叶愛」④「光」⑤「大宙」、これらの名前の読み方がすぐにわかりますか?※本記事の最後に読み方を載せてあります。
こうした名前は、「キラキラネーム」や「DQNネーム」と呼ばれています。ネット上で起源を遡ってみると、大正時代から存在していたという指摘も見られ、諸説があるようです。最近はアニメに登場するキャラクターの名前を当て字にして、子どもに名づける例も増えていると言われています。
こうした状況の中で、政府は5月からはじめる戸籍に読み仮名を付ける運用が始まるのを前に、出生届などで、どう読むのなら認めるかという自治体向けの指針案をまとめました。
認められるのが、①読み方の一部を充てる(例:心愛〈ココア〉)、②熟語として読み方が一般的(例:飛鳥〈アスカ〉)、③読まなくても意味が関係する(例:美空〈ソラ〉)です。一方で、認められないのが、①漢字の意味と関係がない(例:太郎〈ジョージ、マイケル〉)、②別の単語を追加(例:健〈ケンイチロウ、ケンサマ〉)、③別の意味をもつ(例:高〈ヒクシ〉)で、さらに差別的や卑猥で著しく不快感を引き起こすものや、反社会的な読み方で明らかに名前としてふさわしくないものも認めない方針です。
名前をつけるのは、親の権利ですが、子どもはその名前を一生背負って生きていくことも忘れてはいけないと筆者は思います。多くの場合、親は子よりも先に世を去ります。子が成長し、大人になったときに困ったり、恥ずかしい思いをしたりしないような名前をつけることは、親の責任ではないでしょうか。また、名前によって、不利な状況が起きていることも考えるべきです。名前が負担になってしまい、精神疾患を患ってしまう子どもが一定数いるほか、近年では企業の採用試験や学校生活でも、名前による印象が影響を与える場面が多いと聞いたことがあります。時には誤解を招くことにつながり、社会で円滑なコミュニケーションをとるのが難しくなる恐れもあるだけに、名前の持つ意味を慎重に考えることが必須だと思います。
改名は15歳から一人で手続きできますが、名前は親が子どもに最初に贈る大切なものでもあります。だからこそ、子どもにとって本当にふさわしい名前なのか、親の自己満足に偏っていないか、今回の政府の動きをきっかけに改めて考える機会になればと願います。
※①かぶと ②みこと ③のあ ④れい ⑤てん
【参考記事】
14日付 日経電子版 「戸籍の名前、読みがなに指針案『彩夢(ユメ)はOK』」
2024年12月2日付 日経電子版 「戸籍に読み仮名、自治体負担重く 膨らむ経費に不満も 国は読み方指針を提示へ」
2017年 2月17日 日経電子版 「どう読むの? キラキラネームの最新事情」
2024年11月13日 読売新聞オンライン 「読めないキラキラネーム終了で書けない『エモい漢字ネーム』が人気」
【参考資料】