洋画離れ? 興行収入ランキングの変化から考える映画への関心

昨年の映画興行収入が発表されました。海外の実写作品が2000年以降で初めて一つもトップ10に入らなかったことが注目されています。

日本では2006年に邦画が洋画のシェアを上回って以降、「洋画離れ」が進んでいました。硬い内容の洋画作品は見られなくなってきているという声もあります。一方で、邦画アニメの人気はますます高まっています。洋画実写の興行収入が減り続けることで、配給会社が今までのように新作の海外作品の上映権を買いつけられなくなることが懸念されます。

要因としては米ハリウッドにおけるストライキや、コロナ禍を契機とした映画ビジネスの変化が挙げられます。

2023年、ハリウッドの脚本家と俳優の労働組合が相次いで起こしたストライキは118日間に及びました。俳優ら約16万人が加入する全米映画俳優組合は大手制作会社に待遇改善や人工知能(AI)の規制を求め、労使交渉で暫定合意に至りました。過去最長となったストライキの影響で、撮影や宣伝活動での混乱や公開の延期が生じたことも報告されています。

加えて、ハリウッドの営業戦略が変化したことも関係しています。コロナ禍で映画館への集客が難しい状況になりました。そこで目をつけたのが配信です。ワーナー・ブラザーズは劇場と配信の同時公開を始め、ディズニーも劇場公開から原則として1ヶ月半後に配信するようになりました。わざわざ映画館へ足を運ばなくても作品を楽しめるようになったのです。その結果、米国ではコロナが明けると「映画館へ行くことがイベントにならない作品は当たらなくなった」と言われています。家族で楽しむ子ども向けアニメなどが集客している半面、実写のヒットは難しくなりました。

筆者もネットフリックスやアマゾンプライムビデオといったサブスクに登録し、自宅で鑑賞することもあります。配信されているオリジナル作品に熱中し、映画館に出向く回数は減ってしまいました。しかし、家にいるとどうしても他のことに気が取られてしまい、作品に集中できないとも感じています。他に気を取られることなく、大スクリーンや高音質の機材で作品を楽しめる映画館はやはり特別に思います。

先日、ミニシアターのアップリンク京都で「アット・ザ・ベンチ」という作品を鑑賞しました。事前に流れる予告編や劇場内のポスターを見て、面白そうだと思える作品にも出会えました。サブスクはさまざまな分野の作品を気軽に楽しむことができますが、映画館という環境で一つの作品をじっくり観る時間は格別だと思います。今後公開される作品で今から楽しみにしているものもあります。

冒頭では洋画離れについて述べましたが、劇場に行けばさまざまな公開情報を知ることができ、幅広い関心に応えてくれるかもしれません。自分の部屋で作品に触れることができる時代ですが、足を運び、非日常空間で映像を楽しんでみませんか。

参考記事

18日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)23面(文化)「“洋画実写”トップ10から消えた」

参考資料

日本経済新聞電子版 「国内映画興行収入24年7%減 洋画不在、アニメ頼み続く」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC283JN0Y5A120C2000000/

読売新聞オンライン 「ハリウッド俳優らの『過去最長』ストが終結、制作現場でのAI仕様の新たなルール作りで合意」https://www.yomiuri.co.jp/world/20231109-OYT1T50104/