昨年7月に福岡を訪れた際のことです。ホテルでチェックインする時にお金を求められました。その正体は「宿泊税」で、2人分で400円徴収されました。この宿泊税は最近聞くようになりましたが、どんな制度なのでしょうか。
朝日新聞の記事によれば、宿泊税は地域の事情に応じて条例を作り、特定の用途のために課税できる法定外目的税だそうです。現在は11の自治体が導入しています。福岡県や東京都、京都市、北海道ニセコ町など観光客が多い自治体ばかりです。25年度中に導入を決めた自治体も広島県や宮城県、静岡県熱海市など14あるといい、これからますます広まっていくと考えられます。
私が住んでいる京都市では、宿泊税の最高額を引き上げる方針が発表されています。税額は宿泊料金により3段階に分けられ、現在の最低額は200円、最高額は1000円となっています。改正案では段階分けを変更し、10万円以上の宿泊料金に1万円の宿泊税を課すといいます。引き上げを行えば税収は現在の2.4倍の126億円になります。なお、京都を訪れる修学旅行生からは徴収していません。
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日経電子版「京都市の宿泊税、最高1万円に引き上げへ 税収2倍以上」より引用
宿泊税は何に使われているのでしょうか。京都市の資料によれば、昨年度は「災害時等における市民・観光客等の安全対策」や「街路樹の育成管理など」に特に多く投じられています。今年度行われた観光特急バスの新設や運賃箱の更新も宿泊税が活用されています。他にも文化財の改修事業や無電柱化など、使途は多岐にわたるようです。観光客だけでなく、市民も快適に過ごせるような政策が進められています。
福岡市では「九州のゲートウェイ都市機能強化」「地域や市民生活と調和した持続可能な観光振興の推進」などに使われるようです。「MICE都市としてのプレゼンス向上」という使途も気になりました。MICEとは国際会議や展示会などビジネスイベントの頭文字をつないだ用語です。福岡でも、より観光客を集めたりオーバーツーリズムの対策になったりする施策が採り入れられていました。
このように観光客・市民のために使われる宿泊税ですが、知名度はまずまずといったところです。京都市の宿泊事業者アンケート調査では、日本人の認知度が8割以上という回答が最も多い一方、外国人客の認知度は2割未満であるとの回答が最多です。支払いに対しては「説明しても苦情を受けることがある」との回答もあり、外国人を含めた観光客全体への広報が必要だと感じます。
宿泊税は宿泊事業者への負担や実質的な値上げになっているとの指摘もあり、議論が続いています。持続可能な観光のためには、トラブルを防ぎつつ有意義に税収を用いることが大切です。
参考記事
9日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面「宿泊税課す自治体急増」
参考資料