石破首相は日本時間7日午前、政府専用機でアメリカに到着しました。1月に就任した米国のトランプ新大統領と会談するためです。両首脳が対面で会うのは、初めてとなります。トランプ氏は1月の就任演説で、「The golden age of America begins right now(アメリカの黄金時代は今から始まる)」と発言しました。日米関係も「黄金時代」になるのでしょうか。
米国が世界に与える影響は計り知れません。米国内政策にも注目する必要があります。本稿では、就任初日に次々と打ち出した大統領令のうち、反ジェンダーの動きについて考えていきます。
トランプ氏は就任初日、「生物学的な男女」のみを性別として認めるとの大統領令に署名しました。政府発行の身分証における性別を生物学的な男女のみとし、それ以外の表記を認めないようになります。また、ジェンダーイデオロギーに対する資金提供を終わらせる措置や、性的マイノリティの生徒支援に関する教育省の文書の撤回なども求めました。
トランプ氏はこうした大統領令により「ジェンダーイデオロギーの過激主義から女性たちを守り、連邦政府に生物学的な真実を取り戻す」としています。しかしこのように、ジェンダーイデオロギーと女性の権利は、相反するものなのでしょうか。
ジェンダー(gender/社会・文化的性差)はそもそも、フェミニズムの運動や理論を通して鍛え上げられてきた概念です。女性に対して抑圧的な社会構造を指すうえで、国際的に使われてきました。反ジェンダー派は、中絶、性教育、同性愛などを「ジェンダーイデオロギー」とし、家族制度と道徳を腐敗させると非難しています。第1次トランプ政権が指名した最高裁判事らによる、中絶の規制・禁止を各州が決定できるとした判決も、反ジェンダー運動の流れを汲んだものであるといえます。
本大統領令の署名により、大統領がトランスジェンダーを否定したのだから差別しても構わない、という考えが拡大するかもしれません。世界中に広まる恐れさえあります。米国では、今後も反トランス・反ジェンダーの政策を打ち出す可能性が高いといえます。外国の話だからと目をそらさないで、私たちも注視していくべき問題です。
参考記事:
・2025年2月4日付 日経電子版 石破首相が初訪米 対トランプ交渉の備え 7日に日米首脳会談
・2025年1月30日付 朝日新聞デジタル ジェンダー・イデオロギーと闘う? 反トランスの大統領令を読み解く
・2025年1月25日付 朝日新聞デジタル 【そもそも解説】トランプ氏が多数署名 米国の大統領令ってなに?
・2025年1月21日付 朝日新聞デジタル 「性別は男女のみ」 トランス否定の大統領令「公権力によるヘイト」
・2025年1月21日付 BBC NEWS JAPAN 「トランプ氏が米大統領に就任『アメリカの黄金時代が始まる』」
参考資料:
・2025年2月3日放送分 ニュースで学ぶ「現代英語」 「トランプ新大統領 就任」