アパレル産業の担い手を尋ねる③身体に害のない異物「コンタミネーション」とは

連載「アパレル産業の担い手を訪ねる」の第3回は、綿の加工後に残留する付着異物「コンタミネーション」を切り口に、日本の繊維・アパレル産業の構造を掘り下げます。

 

綿から糸を作るために

インドのタミルナードゥ州にある、綿花の栽培、調達、加工、販売を手掛ける「Santhalakshmi Mills」社。この会社が製造する上質なコットンは世界最高級品として、厳選された高級ブランドの織物製品に使用されています。昨年7月下旬、筆者はこの会社を訪れ、収穫した綿から種などを取り除く作業「ジンニング」の様子を見学しました。

糸をつくるためにはまず、収穫した綿の中から成熟しきっていない綿や、ビニールなどのごみを排除する必要があります。「ジンニング」と呼ばれるその作業は、普通は機械のみを使いますが、Santhalakshmi Millsでは伝統的な方法で人の手も介して作業が行われていました。

ジンニングの様子(7月23日、筆者撮影)

 

身体に害のない異物「コンタミネーション」

ジンニングで取りきれなかったごみのことを、産業界では「コンタミネーション」と呼んでいます。染色にムラができないようにしたり、商品価値を高めたりするには、排除が欠かせません。

一方で日本では、過剰に品質を追求するあまり、コンタミネーションを理由に消費者の知らないところで製品を廃棄したり、コンタミネーションを排除しきれないリスクを懸念してインド産のオーガニックコットンを控えたりしている現状があります。つまりコンタミネーションは、インド産のオーガニックコットンが日本で普及しない原因の一つになっています。

そもそもオーガニックコットン製品は、コンタミネーションが混ざりやすいという特徴があります。枯葉剤を使用しないため枯れ葉などの異物が混ざりやすく、綿の栽培が生活に密接しているからこそ農家が飼っている動物の毛が混ざってしまうなどの事情があるためです。こういった背景を知らず、1㎟にも満たないコンタミネーションで製品が廃棄され得るということに、筆者はかねてより疑問を抱いてきました。

 

コンタミネーションの排除と綿の管理

とはいえ品質向上のためには、コンタミネーションの排除は欠かせません。実際にSanthalakshmi Millsでも、人の目だけではなく、機械も用いて何度も異物の排除を試みていました。

同社の代表を務めるラクシュマンさんは、「収穫した綿の管理方法にも問題がある。農民への教育が大切だ」と訴えていました。コンタミネーションの排除だけではなく、収穫した綿に異物が混ざらないように、いかに管理するかも大切だというのです。

「コンタミネーション」。それ自体が日本でほとんど知られていません。そのため、排除と品質追求のあり方やバランスについて見直すきっかけすらないのです。これらは見過ごされてきた課題だと思います。サプライチェーンの透明性だけではなく、その工程ひとつひとつにも光が当たるようになれば、よりサステナブルな循環が生まれるのではないでしょうか。

連載「アパレル産業の担い手を尋ねる」第4回となる次回は、アパレル産業における日本とインドの繋がりについて考えます。

参考記事
2021年7月27日付繊研新聞電子版「コンタミ全てがB品じゃない Tシャツを通じ問題提起 インド産有機綿の普及に一石