右派が台頭するフランス 分断の理由とは?

最近、フランスの友人がある人物の死去を報じる写真をインスタグラムのストーリーに載せていました。その人物とは、フランスの極右政党「国民戦線(FN)」の創設者、ジャンマリ・ルペン氏です。ジャンマリ氏の死去を祝う集会が行われ、それに反対する声も上がるなど賛否両論があるようです。友人は死去を祝う言葉を添えていました。

ジャンマリ氏は反移民・反ユダヤの過激な発言を通じて大衆の支持を得ました。移民規制を訴える排外主義的な姿勢で、極右やポピュリズム(大衆迎合主義)の先駆けとなったといいます。ナチス・ドイツがユダヤ人虐殺に使ったガス室を「歴史上、ささいなこと」と発言したこともあり、戦時中ナチス・ドイツに占領されたフランス国内で彼に反対する人が多いことも理解できます。

12月28日付日経電子版「選挙イヤー、主要国の全与党が議席減 世界に分断の爪痕」より引用

現在、ヨーロッパでは右派が台頭しています。昨年仏下院の総選挙では、ジャンマリ氏の娘マリーヌ・ルペン氏が率いる、FNの後継「国民連合(RN)」が第一党となりました。昨年6月の欧州議会選では極右・右派勢力が2割以上の議席を得ており、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」やイギリスの「リフォームUK」も支持を拡大させています。

移民排斥などを掲げる右派が台頭した背景としては、物価高や住宅難、SNSでの宣伝などが指摘されています。日経新聞では「急速なリベラル化、多文化主義」が挙げられ、

「負け組になったと感じる有権者は、白人キリスト教徒をベースにした社会がさらに変わるのを恐れる。域内グローバル化をけん引した「エリート層」に反感を持ち、スケープゴートを探す。移民を攻撃する極右は魅力的に映る。もともとくすぶっていた人種差別に火が付いたという面もある。」(2024年7月9日、日経新聞電子版)

と述べられています。

確かに、私がフランスを訪れていた時にも、美しい街並みの中で野宿をしたり、物乞いをしたりする人の姿を目にしました。市民の間での格差が拡大している様子を実感します。財政再建や教育格差などまず対応すべき国内の課題は山積していますが、マクロン大統領の政権運営は不安定です。

このように、グローバル化が進む一方で社会の分断が進んでいます。トランプ氏が米大統領に就任し、自国第一主義やポピュリズムがさらに勢いを増すかもしれません。日本でも、SNSなどで移民排斥のポストが広まったり、ヘイトスピーチが流れたりしています。SNSのフィルターバブルに飲み込まれず、様々な視点を持つことが大切だと感じます。

生活が苦しく変化を求めたくなる気持ちも理解できますが、排斥が第一の解決策だとは思えません。私は移民出身のホストマザーや友人がフランス人として生活している姿を目の当たりにしました。綺麗事かもしれませんが、すべての人が自分らしく暮らすために、排斥より先にすべきことがあるはずです。これからヨーロッパの人々がどのような決断をしていくのか、注目しています。

 

参考記事

1月8日付 読売新聞朝刊(大阪13版)11面(国際)「ジャンマリ―・ルペン氏 死去」

1月9日付 読売新聞朝刊(大阪13版)8面(国際)「ルペン氏 割れる評価」

1月9日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)9面(国際)「仏右翼伸長の先駆け」

2024年7月9日付 日経電子版「極右ブームの欧州、仏下院選で左派健闘でもくすぶる火種」

2024年12月28日付 日経電子版「選挙イヤー、主要国の全与党が議席減 世界に分断の爪痕」

2024年12月29日付 日経電子版「選挙イヤー、世界で政権に逆風 インフレなど不満噴出」