京都では地元住民、観光客を問わず多くの人々が市バスを利用します。当地で生活を送る中で友人との会話でも、あまりにも混雑していて乗車できないことや時間通りに来ないこともあるといった、オーバーツーリズムの問題が度々話題に挙がります。
筆者は大学やアルバイトに向かう際、近隣に有名な観光スポットがあるため車内が混雑していることは茶飯事です。目的地への到着が10〜15分程度遅れることを見越して行動しなければ間に合わない状況が続いていました。あまりにも混雑しているとドアが開かず、次のバスへの乗車を余儀なくされることもあります。
京都のオーバーツーリズム問題として取り上げられる市バスですが、昨年12月から今月にかけて変化がありました。
1つ目は、現金での支払い方法が「両替方式」から「つり銭方式」に変わったことです。京都の市バスでは、一律料金の230円を下車時に支払うことになっています。去年の暮れからつり銭方式が導入されました。従来の両替方式だと、230円ちょうどを入れる必要がありました。料金を支払う直前になって両替しなければならないことに気づき、支払いと下車に時間がかかっている観光客の姿がよく見受けられました。
これがつり銭方式になったことで両替をしなくても支払いすることができます。市バスを利用する人にとってより簡素化した支払い方法になっていると思います。スムーズな下車が実現され、時間ロスにもつながっています。
もう一つの変化は、運転士のネームプレートに見られます。これまでは運転席の背もたれの後ろ側に、バスの運転士のフルネームが書かれた名札が表示されていました。これが今月から、車両番号の札に変わりました。京都市交通局のホームページによると、「職員のプライバシーに配慮し、より安心して働き続けることができる職場環境を整備していくため」の改善だと言われています。
運転士の名前が公表されていることに関しては筆者も疑問に感じていました。バスに乗車している際、地元住民と思われる乗客の一人が運転士に対して、「なんでこんなに遅れているんだ。会社に言ってやる。名前も覚えたからな」と言っている現場に遭遇したことがあります。この時、人々の命を預かってハンドルを握ることに加え、乗客に対して実名を公表して仕事をする運転士が受けるプレッシャーの重さを感じました。
特に京都の市バスは時間通りに運行することが難しい場面が少なくありません。朝日新聞デジタルの記事でも、観光客の増加が地元住民の生活へ影響を及ぼしていることが指摘されています。時間通りにバスが動かないことで地元住民が焦りを感じることには共感できます。しかし、バスの運転士は常に安全運転と時間通りの運転を心がけてくれています。
京都では生活をするにも観光をするにも、市バスは欠かせない存在です。対策が追いついていない部分もありますが、12月から1月にかけて見られた2つの変化は大きな改善だと思います。日常的に市バスを使う中で、今後どのような取り組みが講じられるのか注目していきたいところです。
参考資料
朝日新聞デジタル 1月10日付 「(取材考記)京都の人口流出 観光の「恩恵」、市民に還元を 日々野容子」https://digital.asahi.com/articles/DA3S16123679.html?iref=pc_ss_date_article
京都市交通局 2024年10月9日 「市バスの運賃箱の『両替方式』から『つり銭方式』への変更」https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000333275.html
京都市交通局 2024年12月26日 「市バス・地下鉄におけるネームプレート及び名札の表記の変更」https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000336102.html