2025年が始まり、新年の目標を立てた方も多いのではないでしょうか。仕事やプライベートで、それぞれ目標があると思います。SNSを見ていると、その中でも「旅行に行くこと」を掲げる人が多く見受けられました。日本人にとって、忙しい日常の中で癒しやリフレッシュの時間を求める気持ちが反映されているのかもしれません。
しかし、この「旅行」が日本人にとって現在非常に難しいものになりつつあります。その背景には様々な要因がありますが、代表的なものとして挙げられるのが、「歴史的な円安」と「物価高」です。海外旅行の場合、円安の影響から日本国内では、数千円で食べられるもの、買えるものに数倍の値段がつけられていることさえ珍しくありません。また、国内でも物価高の影響で家計の負担が増し、旅行どころではないでしょう。特に食費の値上がりは、多くの家庭にとって大きな痛手となっています。
数値で見ても日本人の宿泊旅行が停滞しているのは事実です。観光庁の調査によると「日本人の延べ宿泊者数の推移(22年10月~24年11月)」は、約4000万人泊にとどまっています。こうした背景にあるのが、先述した二つの理由ですが、これにとどまりません。日本経済新聞が以前報じた記事によると、「海外旅行客に競り負けた日本人が、希望の価格帯で宿を利用できないこと」や「観光形態の多様化」「休暇取得の難しさ」も旅行需要に影響を与えています。
たとえ、日本人が休暇を取れたとしても、海外からの旅行客のピークと被ってしまえば宿泊施設の予約は困難なうえ、宿泊費の高騰も避けられません。筆者自身、以前長野を訪れた際、多くの外国人観光客で賑わうなか宿泊予約が難しかった経験があります。旅館の従業員も外国人観光客の対応に追われており、インバウンド需要の強さを肌で感じました。
実際、そのインバウンド需要の成長はすごいものになっています。昨年12月時点で、訪日外国人旅行者は、年間累計で約3337万人となり、過去最多だったコロナ前の2019年の実績を上回っています。このような状況は、日本の観光業に恩恵を与える一方で、日本人の観光需要を抑制する原因にもなっているように思います。
今年は、「2025年問題」と呼ばれる、団塊世代の後期高齢化が進む節目の年でもあり、日本経済には課題が山積しています。観光分野においては、インバウンドに頼るのではなく、日本人の旅行需要を喚起する施策が急がれます。長期的、短期的な視点のバランスを意識し、私たちが旅を楽しめる環境を取り戻すことが、持続可能な観光そして、経済効果へと繋がっていくのではないでしょうか。
【参考記事】
1月6日 日経電子版 「JR・航空、年末年始の旅客1~2割増 9連休で遠出活況」
24年9月16日 日経電子版 「日本人は旅をやめたのか 海外は低迷、国内は伸び悩み」
24年10月15日 日経電子版 「私が旅行をしないワケ 日本人、国内も2023年末から減少」
【参考資料】