喫煙所が防災拠点に? 煙たがられない存在に

大阪市の横山市長は先月12日、市内全域の公道や公有地で路上喫煙を禁止する改正条例を、今年1月27日から施行すると表明しました。今年開催の大阪万博を見越した判断だそうです。

路上喫煙の規制は国を挙げた動きとなっています。20年4月、望まない受動喫煙を防止することを目的として、改正健康増進法が全面施行されました。それに伴い、大阪府も受動喫煙防止条例を制定。

25年4月に全面施行されると、30平方メートルを超える飲食店も専用の喫煙室を設けるなどの対策をしない限り、原則として屋内禁煙となります。喫煙者は公道のほか、飲食店でも禁煙となる場所が増えることになります。

タバコの煙が苦手な私のような人にとっては嬉しい動きですが、愛煙家の肩身は狭くなるばかりのように見えます。ただ、自治体も喫煙所を増やす動きを強め、「分煙」を進めています。自治体が予算を計上し、喫煙所の設置・維持管理の助成金を交付する例もありました。

大阪市は条例施行に伴い、市の要件を満たした指定喫煙所を少なくとも140カ所は確保する見通しとなっています。今後も新設・改修や無償での一般開放も含めるとおおむね200カ所の喫煙所を確保できる見通しとなっているそうです。

そんな中、大阪府堺市の南海堺駅前で少し変わった喫煙所を見つけました。パーテーションの上部はソーラーパネル、一部は倉庫になっています。

筆者撮影:南海堺駅前の喫煙所「イツモモシモステーション」(大阪府堺市・2024年10月11日)

筆者撮影:南海堺駅前の喫煙所「イツモモシモステーション」(大阪府堺市・2024年10月11日)

その名は「防災喫煙所 イツモモシモステーション」。設置元であるJTのホームページによれば、「『いつも』は寄る場所、『もしも』の時は頼る場所。」をコンセプトに、街の喫煙所に防災機能を加えることで新しい価値を生み出すプロジェクトとして、現在、東京・大阪・宮城・福島の計14か所に設置されているそうです。

上部のソーラーパネルは、災害時でも駅前を照らすことが出来る上、倉庫には災害時に使える備蓄品が保管されています。内部にも特徴があります。入ってみると、数枚のパネルが視界に入ります。そこでは、災害時に役立つアイテムが紹介されていました。タバコを吸っている間に自然と目に入るようになっています。防災時に役立つ機能だけでなく、普段から災害への備えを意識できる啓発機能も備えているのです。

タバコを吸わない人にとっても有用な喫煙所の存在は、喫煙者とそうでない人の共存に一役買ってくれるかもしれません。

筆者撮影:喫煙所内、災害時に役立つアイテムが紹介されている(大阪府堺市・2024年10月11日)

 

参考記事

『朝日新聞』「全域禁煙、1月27日に 大阪市の路上、条例施行」(2024年11月13日)

『朝日新聞』「煙る「大阪市、路上禁煙」 2025年、万博開幕あわせ全域方針」(2024年03月06日)

『朝日新聞』「増える喫煙所、なぜ 参入業者、自販機の売り上げに着目 東京・神奈川・大阪、ビルの一角」(2024年05月23日)

『日本経済新聞』「jt、東阪5カ所に「防災喫煙所」 自治体・企業と連携」(2022年9月1日)

JTホームページ「過去最多4つの防災機能を備えた 「防災喫煙所 イツモモシモステーション」 楽天モバイルパーク宮城に誕生」https://www.jti.co.jp/news/20240307_01.html

JTホームページ「「南海堺駅前喫煙所」が街の防災をサポート 『もしも』の際に役立つ3つの防災機能付き喫煙所へリニューアル ~「ソーラーパネル」&「防災倉庫」&「防災啓発」仕様へ~」https://www.jti.co.jp/news/20230120_01.html