ポスト「選挙イヤー」へ 2025年を展望する

2024年は多くの国で大統領選や議会選といった重要な選挙が行われた年でした。先進国を中心に相次いだ与党の苦戦や政権交代は、国内外の政治的な不安定さを露呈させました。

今月20日にはアメリカのトランプ氏が第47代大統領に就任するなど、25年は「選挙イヤー」の影響が本格的に表面化する年になると考えられます。

今年最初の投稿では、ポスト「選挙イヤー」の世界について考えます。

 

◯内向きの超大国

昨年11月のアメリカ大統領選では、共和党のトランプ前大統領が民主党のハリス副大統領に勝利し、返り咲きを果たしました。

トランプ氏は自国第一主義を全面に打ち出すことで強固な支持を集めてきました。

選挙期間中も、中国製品への関税を60%に引き上げ、その他の国の製品にも一律に10〜20%の関税をかけると言及するなど、自国産業の保護を重視する姿勢を示してきました。

グローバル化とともに拡大してきた自由貿易は岐路に立たされています。

ただ、アメリカの内向き化はトランプ政権に特有の現象ではありません。

3日には、現職のバイデン大統領が自国の鉄鋼産業を保護するとして日本製鉄によるUSスチールの買収計画に中止命令を出しました。

内向きになるアメリカが世界経済の透明性や予見可能性を損なうことが懸念されます。

 

◯不安定な少数与党

4月に行われた韓国総選挙ではすでに少数派であった与党「国民の力」がさらに議席を減らしました。

政権運営に苦しんだ尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、先月3日に非常戒厳を発令するという強硬手段に出ました。

その後の韓国政治は混迷を極めています。14日に尹大統領に対する弾劾訴追案が可決され、27日には大統領職を代行していた韓悳洙(ハン・ドクス)首相までもが職務停止に追い込まれました。

少数与党による政権運営という点は日本も共通します。我が国では、今のところ韓国のような大きな混乱は見られませんが、法案の成立のため与党が野党に歩み寄る場面が見られるなど、これまでとは異なる様子も伺えます。

与党の過半数割れという状況下では野党の重要性も大きくなります。野党が政権批判に明け暮れれば法案や予算案が議会を通過せず、政策が停滞してしまうためです。韓国の混乱はそのことを如実に表していると言えるでしょう。

変化の激しい世界にどう向き合っていくのか、今後の与野党の動きに注目する必要があります。

 

◯選挙は続く

「選挙イヤー」は終わったとはいえ、2月にはドイツで総選挙が、夏には日本で参院選が行われるなど、今年も重要な選挙が控えています。

「選挙イヤー」の余波と、新たな選挙の行方から目が離せません。

 

参考記事:

1月4日付 朝日新聞朝刊1面「USスチール買収、認めず バイデン氏が発表 日鉄計画」

日経電子版「「逆転の世界」に備えよ 強まる自国第一、貿易ルール瓦解」(2025年1月1日)

2024年12月30日付 読売新聞朝刊6面(国際)「韓国、司令塔不在の中 航空機炎上 野党、政権攻撃しづらく」

日経電子版「韓国国会、韓悳洙首相の弾劾案可決 与野党が激しく対立」(2024年12月27日)

日経電子版「トランプ関税、日本も対象に? 一律関税実現へ「奥の手」」(2024年12月23日)

日経電子版「韓国・尹錫悦大統領の弾劾可決 職務停止へ」(2024年12月14日)

日経電子版「韓国総選挙で与党大敗 尹錫悦政権に厳しい評価」(2024年4月11日)