今月18日未明、ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入るという衝撃的なニュースが日本中を駆け巡りました。
日本を代表する自動車メーカーの統合は、電動化や知能化の加速といった「100年に一度の大変革」に直面する自動車産業を象徴する出来事であると言えます。
急速な変化への対応が急務となる中、これまで世界で高い存在感を誇ってきた日本勢は生き残ることができるのでしょうか。
◯世界3位の自動車グループに
23日、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が記者会見に臨み、経営統合に向けた協議を開始すると正式に発表しました。新たに共同持ち株会社を設立し、両社がその傘下に入る形になります。
会見には三菱自動車の加藤隆雄社長も同席し、同社は25年1月末をめどに合流の可否を判断することも明らかになりました。
3社の販売台数を単純に合計すると800万台を超え、統合が成立すると世界3位の自動車グループが誕生します。
◯電動化・知能化
会見でたびたび言及されたのは、両社を取り巻く事業環境の変化の激しさです。特に「電動化」や「知能化」といった言葉が繰り返されていました。
自動車業界では「Connected(コネクティッド)」、「Autonomous(自動化)」、「Shared(シェア)」、「Electric(電動化)」の頭文字をとった「CASE」と呼ばれる領域を中心に技術革新が進んでいます。
EVの開発・製造においては米テスラやBYDをはじめとした中国の新興メーカーが先行しています。自動運転技術の開発でも米国勢や中国勢に遅れをとっています。
ホンダと日産は経営統合のシナジーの1つとして「知能化・電動化に向けた人財基盤の確立」を挙げています。
今回の統合でイノベーションを加速させることは、両社の生き残りにとって必要不可欠となっています。
◯ストックビジネスへの転換
こうした中、ライバルのトヨタ自動車は自己資本利益率(ROE)を業界平均の2倍超になる20%にする目標を掲げました。
ROEは純利益を自己資本(株主資本)で割ったものです。株主から集めた資金でどれだけ効率的に稼いだかを示し、投資家が注目する指標の一つです。
ROE向上策の一つとなるのがサービス事業の拡大だといいます。
従来の自動車業界は新車販売台数によって業績が左右されるフロー型のビジネスでしたが、今後はソフトウェアの更新など購入後のサービスで定期的に安定した収入を得るストック型ビジネスの拡大が収益安定化の鍵となってくると見られます。
ビジネスモデルの転換が進めば、各メーカーの勢力を販売台数で捉えていた従来の常識も変わっていくでしょう。
ホンダの三部社長は23日の会見で、経営統合によって「モビリティの新価値を創造するリーディングカンパニー」を目指すとし、四輪車のみに固執しない姿勢を示しました。
事業環境が大きく変化する中、日本企業には従来の常識にとらわれない価値創造が求められています。
参考記事:
日経電子版「トヨタ、ROE目標20%に倍増 世界の車大手でトップ級」(2024年12月25日)
12月24日付 朝日新聞朝刊3面「ホンダ主導、難路の統合 「日産救済」の色合い、鮮明」
12月24日付 読売新聞朝刊1面「ホンダ・日産 26年統合へ 協議基本合意 ホンダ主導」
日経電子版「ホンダ・日産、統合協議開始 26年8月に持ち株会社へ」(2024年12月23日)
日経電子版「NIKKEI LIVE fast ホンダ・日産の会見を緊急解説」(2024年12月23日)
日経電子版「ホンダ・日産が統合へ 持ち株会社設立、三菱自の合流視野」(2024年12月18日)
参考資料:
日テレNEWS(YouTube)|【会見ノーカット】『ホンダ・日産・三菱自 記者会見』経営統合に向けて協議 チャットで語ろう!-経済ニュースライブ[2024年12月23日](日テレNEWS LIVE)