働き方改革が進む日本 見えてきた課題とは?

今年一年を振り返ると、国内では働き方が大きく変化した年となったように思います。例えば、「2024年問題」といわれた運送会社の労働時間改善や全国に約2万4000局ある郵便局のうち約1390局での昼休みの導入、都職員の週休3日の導入方針、年収103万円の壁の見直しなど、社会全体そして各業種で働き方への変化が進んだからです。

筆者自身も就職活動をしていた際には、多くの企業が会社説明の中で福利厚生や年間の有給休暇の取得数、取得率などの「ワーク・ライフ・バランス」を特に強調して説明していたように感じました。また、周りの知人もこうした点に注目して企業選びをしている様子が見られました。

しかし、国内の働き方改革が進む中でも、日本は海外から「働きすぎの国」と見られることが依然として多い状況です。先日筆者が訪れたオーストリアでの体験を紹介します。オーストリアの大手スーパーの一つである「BILLA」では、月曜日から金曜日までの営業時間は7時30分~19時45分まで、土曜日は7時15分~18時00分までで、日曜日は営業していません。

オーストリアのスーパーの営業時間 (筆者撮影)

どうして休むのかを現地の人に聞いてみると、国の法律で日曜日は休むことになっており、ウィーンの中心部の観光地にある一部のお店が営業しているだけで、スーパーや洋服屋などの多くは閉店しているといいます。

平日の営業時間を全体で見ると12時間と日本のスーパーとさほど違いはありませんが、日曜休業からは仕事と家庭の両立が垣間見えます。ただ、その結果、日曜日にも開いている駅構内のスーパーでは、買い物をする人々で行列ができることもありました。

日曜日の駅構内のスーパーには、多くの客が足を運んでいた (筆者撮影)

日本の多くのスーパーやコンビニが夜遅くまで、さらには24時間営業を続けています。こうした状況は、帰りが遅い勤め人を支え、運送会社などの経営にもプラスになっていますが、社会全体で営業時間の短縮をするなどの取り組みが必要だと今回訪れる中で感じました。

さらに、今年の6月に、米国の大手旅行会社エクスペディアが発表した世界11地域の有給休暇の比較調査によれば、日本の取得日数は12日で、取得率は世界最下位となりました。最も高いフランスでは有給休暇の取得は29日で、次に多かったドイツでは27日となっており、10日以上の差があります。一方、日本の祝祭日は21日とこちらは世界でも有数の多さですが、休みの日でも働く人が少なくないこともあり、休暇の取得実態は働く人それぞれで異なっています。同調査では、「休むことに対して罪悪感がある」と答えたのが日本では53%に上り、世界的にも高い水準です。さらに、日本では47%が「休み不足を感じていない」と回答しており、世界でも最も高い割合となっています。これらの回答から日本の文化的な側面が強く現れているように思います。

では、なぜこのような状況が続いているのでしょうか。最大の要因の一つとして「人材不足」が挙げられると筆者は考えます。人手が足りないため、有給休暇を取りたいと思っていても、残りの人がこなさないとならない仕事量を増やしてしまいます。このため、柔軟に有給を消化できていないように思います。例えば、昨日、日本の教育現場の教員の約4割が上限を超えた残業をしていたことが報じられました。こうした教育現場を含め、人手不足解消そして休暇の取得のためには、デジタル化を推進することなどが求められているのではないでしょうか。

また、オーストリアのように、働くときと休むときの境界をしっかりと持つことも必須になってくると思います。すべてを模倣することは、社会に根付いた文化的な慣習を損なう可能性もあり、その点は注意が必要ですが、日本の環境にあった働き方を模索する必要があると感じます。また、個人レベルでの意識改革も必要ではないでしょうか。今の日本では、「働かなければいけない」という固定概念が強くあると筆者も以前から感じており、働き方を変えていく中で価値観を見直し、よりポジティブな働き方を実現していく必要があると思います。

来年以降も、働き方改革がさらに進み、日本社会がより柔軟な勤務形態を受け入れる文化へと移り替わることを期待しています。

 

【参考記事】

27日付 読売新聞朝刊(社会)13版「公立中教員4割 上限超え残業」

10月1日 読売新聞オンライン「郵便局窓口に昼休み導入、全国1390局に大幅増…負担減で11月から」

27日付 朝日新聞朝刊(社会)13版「教員採用倍率 小中高で最低」

27日付 日経新聞朝刊(社会)12版「教員人気回復へ DX急務」

8月17日 日経電子版「日本人は休めているか 祝日頼み、有給消化に罪悪感も」

12月3日 日経電子版「都議会開会 知事、職員の週休3日・部分休暇導入を表明」

12月21日 日経電子版「教員『残業代』30年度に2.5倍 中学も35人学級、政府方針」

 

【参考資料】

エクスペディア「世界11地域 有給休暇・国際比較調査2024を発表」

マイナビ転職グローバル「海外企業の労働時間はどれくらい?残業は?」