増加する「老老介護」〜介護のこれから〜

厚生労働省によると、介護が必要な高齢者のうち同居する高齢者に介護されている「老老介護」の割合は、調査を始めた2001年の40.1%から63.5%に増加しています。

23年度の要介護・要支援者の認定者数は約708万人となっており、前年度に比べ2.0%ほど増加しています。公的介護保険制度が始まった2000年度の認定者数約256万人と比較すると、約2.8倍に達しています。

先日、神奈川県横須賀市で夫(当時84歳)が介護していた妻(81歳)の首を絞めて殺害したとされる事件が起きました。この悲劇の背景には、老老介護によるストレスや苦悩があったとされます。この事件以外にも、介護疲れによる犯罪や自殺のニュースを日々目にします。

警察庁の昨年の統計によると、「介護・看護疲れ」を理由とする殺人事件(未遂を含む)は23件でした。また、「介護・看護疲れ」を理由とする自殺者は348人でした。過半数が60歳以上で、全体の約6割は男性となっています。

増え続ける要介護・要支援者に対して、介護や支援の基盤は整っているのでしょうか。

厚生労働省が発表した近い将来に必要になる介護職員数の推計によると、19年度時点での職員数(211万人)をもとにすると、23年度には233万人、25年度には243万人、さらに、40年度には280万人が必要になるとされます。

政府による支援などもあり、介護職員数は年々増加しています。しかし、職員の増加を上回るレベルで介護の需要が加速している現状があります。

筆者は以前、介護施設の責任者の方とお話をさせていただきました。介護士の処遇について質問をすると、「働く職員の待遇を上げてあげたいとは思っているが、政府からの支援にも限界があるため、なかなか上げてやれない現状がある」と仰っていました。

少子高齢化が進むにつれ、介護の需要に対する供給が追いつかなくなっています。

将来的には、外国人労働者による労働力の確保や、IT化による業務の効率化、ユニットケアやロボットを活用した新たな介護の形の取り入れなど、様々な取り組みが進むことでしょう。

介護施設に対する政府の支援はもちろん、自宅で看護を行う家庭への支援の充実こそ大切なのではないかと筆者は考えます。1人でも多くの人々が、穏やかな老後を迎えられる社会になるよう願っています。

参考文献

介護経営ドットコム 「介護職員の不足数2年後には約22万人に、厚生労働省が全国の集計数を公表」

ONODERA USER RUN 「介護業界が人材不足に陥っている原因と対策について解説」

公益財団法人生命保険文化センター 「リスクに備えるための生活設計」

内閣府ホームページ 「第1章 高齢化の状況」

参考記事

2024/12/22付 朝日新聞デジタル老老介護、抱えきれずに 社交的な妻が認知症に、84歳の夫は「先を悲観」

2024/10/25付 朝日新聞デジタル「家族だから」孤立しがちな老老介護 共倒れのリスク減らす対策を

2024/10/8付 朝日新聞デジタル(声)ケアするプロたちの待遇論じて

 

2024/9/14付 朝日新聞デジタルこのままだと、かあちゃんが―― 鉄アレイ手に 父を殴り続けた長男 朝日新聞デジタル

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