公益通報 勇気ある人を守るためには?

公益通報者保護法という法律を知っていますか。

公益通報とは、「労働者・退職者・役員が、不正の目的でなく、勤務先における刑事罰・過料の対象となる不正を通報すること」と定義されています。

2006年に施行された公益通報保護法では、内部告発をした人に対して、通報したことを理由に解雇や懲戒、減給などの不利益な扱いをしてはならないと定められています。しかし、会社が通報者に対して不利益な扱いをした時の罰則はありませんでした。今回、新たに刑事罰を導入するほか、正当な理由なく通報者を探す行為も禁止されることになるといいます。

2024年12月24日付日経電子版「公益通報者捜し禁止へ、手厚く保護 「報復人事」にも罰則」より引用

 

公益通報というと、兵庫県知事の疑惑についての内部告発が思い浮かびます。パワハラ疑惑などを指摘した文書の真偽を確かめる県議会の百条委員会が25日に開かれ、調査は大詰めを迎えています。日経新聞によれば、内部告発の文書は元西播磨県民局長が報道機関などに送り、4月にほぼ同じ内容を県の公益通報窓口に通報しました。それに対して県は元県民局長を解任し、3月末の予定だった退職を保留。人事課などが調査を行い、5月に停職3カ月の懲戒処分としました。

この対応をめぐって、調査を行う前の通報者探しや不利益な扱いが問題視されています。通報が組織の評判をおとしめるなど「不正の目的」であれば公益通報に当たらない可能性もありますが、慎重な判断が求められます。今後発表される調査結果が注目されます。

消費者や会社で働く人の安全、安心のためには内部通報による自浄作用が必要です。ダイハツ工業の認証不正問題や旧ビッグモーターの保険金不正請求問題でも従業員の通報を企業側が放置していたとされます。内部通報の重要性を企業側が理解する必要があります。就職活動を進める学生として、企業のモラルや風土は重要な判断材料です。

保護制度があっても、不利益な扱いなどの「報復」を恐れて告発をためらう人がいます。改正される保護法が周知され、勇気ある告発者が守られることを願います。

 

参考記事

2024年12月24日付日経電子版「公益通報者捜し禁止へ、手厚く保護 「報復人事」にも罰則」

2024年12月25日付日経電子版「兵庫・百条委、参考人弁護士「通報者捜し、許されない」」

参考文献

消費者庁「公益通報者保護制度」