先日、大学のゼミ活動で中国でよく使われている翻訳ツール、「子牛翻訳」を使う機会がありました。中国語の簡体字から日本語、英語に翻訳をするなかで、民主、習近平、など一部翻訳が抜ける言葉が。中国に言論統制があるという話はよく聞きますが、翻訳機も例外でないのだ、と驚きを隠せませんでした。
このような状況を見ると、日本は言論統制がなくて自由だ、と思ってしまいがちですが、国境なき記者団が発表する「報道の自由に関するランキング」の2024年度版では、180の国と地域の中で日本は70位。意外と低いことが分かります。
表現の自由という面で気になるのが、最近話題になっている選挙ポスターの品位規定です。9日付の日本経済新聞の記事によると、自民、公明両党はポスターの品位を維持する規定やSNSの偽情報の拡散や中傷への規制を検討する公職選挙法の早期成立を目指しているといいます。
ここで考えたいのは、「品位の規定」という部分です。「品位」とは、デジタル大辞泉によると「人や事物のそなわっている気高さや上品さ。品格」。人なら誰しも備わっていることが前提です。しかし、人によって考える「品位」は異なりますし、明確に「これが品位だ」という定義や物差しはありません。無理に基準の設定は表現の自由が失われることに繋がらないか、懸念されます。
今回の選挙ポスターに関して、私なら「品位の規定」よりも「節度を守る」ことを求める方が適当なのかなと思います。選挙という民主主義における重要な手続きのなかで、選挙の趣旨に沿って、かつ選挙の本来の役割を踏まえた上でポスターを作るように呼び掛けるのが妥当な気がしています。
選挙は何のために行われるのか、選挙の意図をそれぞれの候補者が考えた上で作る必要があるのではないのでしょうか。見ていて相手が不快にならないか、選挙という枠を超えていないか。情報の受け手のことを考えた上で、表現の自由を守っていくことが大事だと思います。
<参考記事>
9日付 日本経済新聞「選挙ポスターに品位規定急ぐ 自公、SNS規制は慎重議論」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA080A90Y4A201C2000000/)
<参考文献>
デジタル大辞泉「品位」
朝日新聞デジタル「報道の自由度ランキング発表 日本は順位下げ、G7最下位の70位」(https://digital.asahi.com/articles/ASS533PSPS53UHBI016M.html?iref=pc_ss_date_article)