無線を始めるきっかけに! アマチュア無線の体験運用

無線技術に親しむためのイベントが11月30日、奈良市のアイコム株式会社ならやま研究所で開かれました。研究所の紹介や体験運用があり、大勢の人で賑わっていました。

アイコム株式会社ならやま研究所(11月30日、筆者撮影)

 

体験運用では子どもたちが実際に無線機を操作し、交信を楽しんでいました。アマチュア無線や無線技術にたいする理解と関心を深めるために令和5年から始まった制度で、免許がなくても、無線従事者免許証をもっている人の監督のもとで交信を体験できるようになりました。筆者も試してみました。

まず、免許を持っている人が相手局を呼び出してくれます。応答があると私にマイクが渡されました。緊張しながら、最初に名前と運用場所を伝えました。すると、相手も名前と運用場所を返してくれました。私は聞き取り、メモをします。このようにお互いの情報を交互に伝えながら、テンポよく会話が進みました。聞くと、相手局は50年以上アマチュア無線をしているベテランの人でした。最後に、感想やお礼を言って終了です。慣れない交信だったので緊張しました。

無線局の名前にあたるコールサインや、自分自身の名前、交信している場所など、ある程度決められた情報をお互いに伝え合うため、相手の顔が浮かぶような気がしました。

筆者の体験運用をサポートしてくれたアイコム社の野村秀明さんは、無線機器の設計・開発を担当しているそうです。無線関係の仕事をしていた父親の影響もあり、野村さんが免許を取ったのは中学2年の時。高校でもアマチュア無線に熱中し、大学は理工学部に進みました。そこではアマチュア無線のサークルに入り、交信局数を競う「コンテスト」に力を入れたといいます。野村さんは「24時間、48時間といった決まった時間で交信できる数を競うコンテストは、スポーツのようでアマチュア無線の楽しみの1つです」と話してくれました。

野村秀明さん(11月30日、筆者撮影)

総務省の資料などによると、1952年に第2次世界大戦で禁止されていたアマチュア無線の予備免許がおりて、それ以降1994年までアマチュア無線局の数は増加傾向にありました。しかし、同年の136万局を境に減少に転じます。今年9月時点では、35万局まで減ってしまいました。

最盛期の当時はスキー場で携帯電話が通じなかったため、わざわざ免許を取得した人もいるといいます。「今は携帯電話、インターネットが普及して、若い世代が興味を持つきっかけが減ってしまったのでは」と野村さんは話します。

アマチュア無線の全国組織である「日本アマチュア無線連盟」や関連企業などは、イベントでの体験運用などを通じて、アマチュア無線を多くの人に知ってもらう取り組みをしています。

 

同社の中岡洋詞社長は、「アマチュア無線は、アンテナを設置するなど難易度が高いものもあるかもしれません。しかし、体験教室などを通して、宇宙との交信やインターネット経由でアマチュア無線家との交信ができることなども知ってもらいたい。そして、どのような回路になっているのかなど、アマチュア無線をきっかけに無線技術や科学に興味を持ってもらいたいものです」と話していました。

中岡洋詞社長(11月30日、筆者撮影)

 

参考文献:

2022年9月30日付 日経電子版 アマチュア無線、人気復活の兆し 巣ごもりや規制緩和で

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF213560R20C22A8000000/

参考資料:

総務省 電波利用ホームページ

https://www.tele.soumu.go.jp/