明治神宮外苑の再開発 懸念されている環境への影響

 

1年延期されていた明治神宮外苑地区の樹木の伐採が10月28日から始まりました。文化人やアーティストらから反対の声が上がる中で再開発が進んでいます。

明治神宮外苑地区で伐採作業が始まっている(11月19日、筆者撮影)

 

今回の計画では秩父宮ラグビー場、神宮球場が建て替えられ、新たにホテルやオフィスビル、テニスコートの建設が計画されています。さらにオープンスペースの整備により災害時の一時避難場所や滞在場所が増え、防災性が高まるといいます。

 

2023年9月7日に国際NGOイコモスが文化的資産の保全・継承のため「ヘリテージアラート」を出し計画の撤回を求めていました。当初の計画では、再開発前の段階で保存樹木は886本、移植樹木が275本、伐採樹木が743本だったのが、再開発後は保存樹木と移植樹木の本数はそのままで伐採樹木よりも94本多い837本が新たに植えられる予定でした。

 

しかし、強い反対を前にして、同年9月29日には延期が発表されて伐採本数を減らす案が検討されました。その後、24年9月9日の見直し案で、伐採樹木は見直し前の743本から619本に変更されました。さらに新植樹木は当初計画の837本から1098本へと261本増える計画となっています。この見直しによって再開発後の総本数も変わり、保存樹木が964本、移植樹木が242本、新植樹木が1098本となり、再開発後の合計の樹木は1904本から2304本へ増加します。

 

千駄ヶ谷駅を降り、国立競技場前広場を過ぎると明治神宮第二球場跡地を取り囲む白いバリケードが見えました。地上からでは中の様子を確認することができませんが、球場に隣接する国立競技場の空の杜から中の様子を見ることができます。中ではチェーンソーで木が伐採され、次々と運ばれており、自然との共生の難しさを改めて痛感しました。反対運動をしていた方にお話を聞くと「100年後を見越して昔の林学者が全て計画したものが明治神宮の100年の森。木々が伐採されることによって、樹冠被覆率が下がりヒートアイランド現象にもつながる」と話していました。

伐採され運ばれる木(11月19日、筆者撮影)

 

今回の再開発の大部分は風致地区に指定されています。自然的景観を形成している区域のうち、都市環境保全のため風致の維持が必要な区域を指します。そこでは新たな建設や建築物等の色彩変更、木竹の伐採などが禁止されています。今回の計画は地区のまちづくり指針等に沿い、公共的な街づくり手法等の適用を受けています。このため、周辺の風致とも調和する場合は許可を得て建築が可能となっているそうです。

 

36年に完成予定の神宮外苑地区のまちづくり。神宮第二球場跡地の樹木の伐採が始まり、一方で伐採に反対の声が上がる中、今後の工事や東京都の動向に引き続き注目していきます。

 

参考文献:

2023年9月7日付 朝日新聞デジタル 神宮外苑再開発に「ヘリテージアラート」 イコモス、事業撤回求める

https://www.asahi.com/articles/ASR9764ZBR97OXIE01X.html

2024年10月29日付 朝日新聞デジタル 神宮外苑、伐採に着手 批判受け約1年延期

https://www.asahi.com/articles/DA3S16070747.html

2024年9月10日付 日経電子版 神宮外苑再開発、伐採本数を抑制 三井不動産が見直し案

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC091530Z00C24A9000000/

2023年9月29日付 読売新聞オンライン 神宮外苑の再開発、樹木の伐採開始を2024年1月以降に延期…本数減らす具体策を検討

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230929-OYT1T50270/

 

参考資料:

神宮外苑地区まちづくり

https://www.jingugaienmachidukuri.jp/

東京都都市整備局

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07.htm

国土交通省

https://www.mlit.go.jp/