今日は年内最後の祝日、勤労感謝の日です。労働を尊び、その成果に感謝するための日として定められています。もともとは『新嘗祭(にいなめさい)』と呼ばれ、五穀豊穣を祝う行事として古くから親しまれてきましたが、戦後に改めて祝日となりました。昨今、働き方について議論されることが多い中、働くことの意義を見つめ直す日です。今進められている働き方改革について考えます。
◼︎漁業の働き方改革 岡山の挑戦
今朝の朝日新聞には、岡山県玉野市の漁師、富永邦彦さんと妻の美保さんが取り組んでいる「完全受注漁」が紹介されていました。この方法は、注文があった時にのみ出漁し、効率的に働くことで労働時間を大幅に減らしながら、収入の安定化を図るものです。富永さんはインターネットを通じて注文を受けた後、漁に出て、捕れた魚を直接消費者に販売する仕組みを作り上げました。その結果、売上は倍増し、燃料費も削減され、働く時間も半減しました。注文がない日は漁に出ず、午前中に帰宅することも可能となり、家族との時間が増えたそうです。このように、働く時間を柔軟に調整できると同時に、消費者との直接的なつながりが強化されるというメリットもあります。
一方、直販の拡大には課題もあります。漁業者が自ら市場を通さずに消費者に直接販売するようになるため、地元の漁協が取り扱う魚の量が減少します。これにより、漁協の売上が減り、漁協との関係が悪化しかねません。また、漁業者が独自にネット販売をすることで、販売価格や取引のルールにばらつきが生まれ、他の漁業者との競争が激化する恐れがあります。富永さんはこの問題に対応するため、地元の漁協と協力してルールを作り、直販でも一定の手数料を支払うことで調整しています。しかし、高齢の漁業者にとってはネット販売の導入が難しく、漁協の株式会社化や他の選択肢を模索する声も上がっています。
◼︎小学校教員への支援拡充が急務
読売新聞の記事では、東京都内の小学校で進められている教員支援体制の強化に注目しています。近年、教員の過重労働が問題となる中、教科担任制の導入や外部人材の配置により、教員が授業準備や生徒との向き合いに集中できる環境が整いつつあります。特に、事務作業を担当する支援スタッフやICT支援員の導入により、教員の負担が軽減され、退勤時間の短縮にもつながっています。
また、東京都世田谷区では新たに「学校包括支援員」が導入されました。授業中に落ち着かない子どもに付き添ったり、休み時間に子どもたちの様子を見守ったりして、担任の負担を軽くすることを目的としています。これにより、教員が授業準備や児童・生徒への対応に集中できる時間が増えます。また、東京都教育委員会は、ベテラン教員が若手教員をサポートする仕組みを導入しました。若手教員の不安やストレスを軽減し、離職防止を図ることが期待されています。
改革が進む一方で課題となるのが、地域間格差です。都内では支援体制が充実していますが、地方では財政的な制約から教員の給与や支援体制に差が生じており、これが教育の質に影響を与える可能性があります。文部科学省は教員の増員や教職調整額の引き上げを検討していますが、財務省との調整が難航しており、実現には時間がかかりそうです。今後、地方自治体と国が連携して支援体制の均等化を進めるなど、全国的な改革が必要となるでしょう。
様々な業界で新しい働き方が進められています。漁業の「完全受注漁」や教育現場における「学校包括支援員」のように、働き方を柔軟にして効率化を図りつつ、生活の質や充実度を高める改革が広がっています。その一方で、地域間格差や支援体制での課題は残っています。今後、働き方改革がさらに進み、より多くの業種で自由な働き方が実現することを願っています。
参考記事:
11月23日付 朝日新聞 朝刊31面 「注文ある時だけ出漁、働き方改革育つか 岡山で挑戦、漁業関係者注目」
11月23日付 読売新聞 朝刊6面 「小学教員 支援拡充が急務 多忙 志望者が激減 教科担任制や外部人材」
11月23日付 読売新聞 朝刊6面「連続勤務14日以上 禁止提言 労働基準法改正へ」